「プロスポーツビジネス 私たちの成功事例」(上野直彦/野口学)

メディア寄稿実績

スポーツビジネス界のトップランナー9人が自身のスポーツビジネスにおけるキャリアや仕事論を語る一冊。クラブ経営、放送権ビジネス、スポーツデータリサーチ……多様な仕事論が詰まっている。面白かったのはスポーツファシリティ研究所代表・上林功氏と、JTBに所属する倉田知己氏の章。

前者は「スタジアム論」、後者は「スポーツツーリズム論」。共にこれから日本のスポーツ界にとって大きな役割を果たすであろうジャンルである。

書籍概要

書籍名:プロスポーツビジネス 私たちの成功事例

構成者:上野直彦/野口学

発行:東邦出版株式会社

価格:1,500円(税別)

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スタジアム論

倉田氏は良いスタジアムの条件として「遊環構造の7原則」を挙げる。7原則の1つが「循環に広場が取り付いていること」。マツダスタジアムの有名は“バーベキューができる席”や“寝ソベリア”はこの原則に基づいて建築されている。近年のスタジアムはスポーツを観る以外の役割も重要視されつつあることを知れる。

先日、参加した宇都宮徹壱氏のイベント内で発せられた「スタジアムを建設する何十億円という金で老人ホームが何個も建築できる」という参加者の発言が印象に残っている。スタジアムが地域にとってどれだけ必要な投資なのか。複合型スタジアムは近年のトレンドだが、地域のためにサッカー以外の有効活用は今後もっと議論されるべきテーマなのだろう。サッカー関係者以外のステークホルダーに満足してもらえてこそスタジアム文化は発展する。

スポーツツーリズム論

我々サポーターにも馴染み深いのが「スポーツツーリズム」。静岡に遠征すれば「さわやか」の行列に並ぶし、福岡に遠征すれば「おおやま」でもつ鍋を食べずにはいられない。スポーツ観戦を観光とセットにすることで、スポーツツーリズムの価値が高まる。そうした付加価値の重要性が2019年ラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピックを控える中で見直されている。スポーツビジネスにおいてコントロールが不可能な勝敗以外の充実を図ることは当然のアプローチだ。

本書ではスポーツ観戦で訪日した外国人観光客が「トレッキング」など、アクティブ(自然)体験を求める声が多いデータが紹介されている。日本には他国が羨む魅力がまだ眠っているようで、自然の中を走るマラソン大会や、サイクルロードレースは日本スポーツツーリズムの十八番となる可能性を秘めている。

個人的には完全にマンネリ化しているJリーグアウェイ遠征にも同じことが言える。試合観戦を軸とした1日(数日)トータルプランの提案は本当にありがたいもの。アウェイサポーターの集客は多くの地方クラブにとって重要なテーマで、地域貢献にも直結するはず。今後のスポーツツーリズムの発展に期待したい。

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ABOUTこの記事をかいた人

1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。現在はスポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆。F1と競馬も好き