サンティアゴ・ベルナベウは生きていた -マドリード遠征記-

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スタジアムが表情を変えた。観客によって「命が吹き込まれた」と表現した方が適切かもしれない。前日に訪れたスタジアムツアーで「老朽化が進んでるな……」くらいの印象しかなかった場所が、試合日には聖地と化した。

欧州チャンピオンズリーグ「レアル・マドリード 対 パリ・サンジェルマン」の観戦を目的にマドリードを訪問した。会場は「エスタディオ・サンティアゴ・ベルナベウ」。期待していた光景を見ることができた。

日常と非日常が混ざり合うスタジアムで -バルセロナ遠征記-

2018年2月12日

スタジアムが生きている

ナメていた。

ここに来る3日前に訪れたカンプ・ノウが“日常の延長線上”のような雰囲気だったので、似たようなものを想像していたのだ。

それは良い形で裏切られる。試合前から予兆はあった。スタジアム周辺にあるサポーターの溜まり場は、アルコールとゲロが混ざったような匂いが充満しており、明らかに治安が悪かった。非公式グッズを販売する出店にはウルトラスの文化を感じさせるタオルマフラーが並んでいた。

そして、試合前のハイライトは「バス待ち」。こんなに大人数で選手達を乗せたバスの到着を待ち、歓迎する光景は見たことがない。大声量でチャントが歌われる空間は“熱狂”そのものだった。

スタジアム入場後も驚きは続く。

「ゴール裏で応援するサポーターは少ないんだな」と観客席を見渡していたら、「俺達を見くびるな」とばかり、超ビッグフラッグが掲げられた。「熱狂的な応援=ゴール裏」という目線がそもそも間違っていた。ここで応援するサポーターは席種に関係なく試合に関与する姿勢を持っていた。だからこそ、あの雰囲気を作り出せる。Jリーグでは体感したことがない熱量だ。

試合前に掲げられたビッグフラッグ

試合中に最も印象的だったのは、PSGのエースであるネイマールへのブーイング。5.1chサラウンドの映画館にいるような迫力。特にシミュレーションに対する反応(野次)は凄まじく、スタジアム全体で共通の価値観が共有されていることを実感した。誰かがリードしている訳ではない。リアクションのすべてが自然で、生々しく、熱があり、その結果としてスタジアムが感情を持った。

喜ぶレアルマドリードサポーター

スタジアムからの帰り道、ガンバ大阪が万博記念競技場を使っていた時代に「歌え万博」という“ゴール裏以外の席でも積極的な応援を促す活動”が行われていたことを思い出した。あの活動の到達点をマドリードで経験した気がした。いつかこの雰囲気をパナスタでも作り出せる時は来るのだろうか。そんなことを考えながら帰路についた。

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1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。現在はスポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆。F1と競馬も好き