現実と自信の狭間で。宮崎崚平、セルビアでのラストチャンス

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プロサッカー選手・宮崎崚平。高校卒業後はジョイフル本田やいわきFCなどでプレーした後、ポーランド、アメリカ、マレーシアと、海外クラブでキャリアを重ねてきたストライカーだ。そして2021年、新たな戦いの地に選んだのはセルビア。どのような経緯で東欧の地に辿り着いたのか。“もうひとつの欧州組”の戦い方とは……。

高卒でサッカーを諦めなくて良かった

2020年冬、宮崎は悶々とした日々を過ごしていた。

前年はマレーシア3部のMelawati(メラワティ)FCに所属。背番号10を任されたことが示す通り、クラブからの期待は高かった。しかし、リーグ戦は開幕直後に新型コロナウイルスによる影響で中止が決定。試合はおろか家からの外出も制限され、練習すらできない日々が続いた。自宅で過ごす時間が増える中で、繰り返す自問自答は今後のキャリアについて。そこで再確認できたことがあった。それは、プロサッカー選手としてキャリアを歩み始めた当初から持ち続けている目標。

「25歳という年齢はサッカー選手としてステップアップを狙うには遅い」と分かっていても、「欧州のトップリーグでプレーすること」と「日本代表に選出されること」を諦めたくない。

高校時代の先輩・後輩の活躍も刺激になった。鹿島学園高等学校出身の彼には2学年上に西谷和希(徳島)と西谷優希(栃木)、2学年下には小谷野拓夢(福山シティFC監督)がいる。日本サッカー界で知名度を高める彼らに対して宮崎はライバル心を隠さない。学生時代の実力不足を認めつつ、積み重ねてきたプロサッカー選手としてのキャリアに自信も覗かせる。

「海外でプレーしたことで、日本でプレーする選手とは違う経験を積めたし、高校卒業後にフィジカル的な成長もありました。人より遅れたけど、高卒でサッカーを諦めなくて良かったと思っています」

セルビアを選んだ理由

宮崎に吉報が届いたのは、年が明けた2021年1月。

セルビア・スーペルリーガの『FKバチュカ』からの獲得オファーだった。柏レイソルでもプレーしたサーシャ・ドラクリッチも所属経験のある、南バチュカ郡をホームタウンとするクラブだ。

「欧州のクラブであれば給料は月に数万でも良いと代理人に伝えていました。コロナ禍でどこも経営難に苦しんでいるからこそ、アジア人を安く買って高く売りたいクラブがあるかもしれないという考えもありました。とにかく欧州でプレーできれば5大リーグのスカウトに注目してもらえる可能性が高まる。マレーシアやアジアでプレーする選択肢もあったのですが、それは今じゃないなと。(アジアであれば)10年後でもプレーできる自信もあります」

FKバチュカは宮崎の他にも複数の選手を同時期に獲得しており、チーム内の競争は熾烈だ。皆がこのチームからのステップアップを狙っている。練習時から激しく削り合う環境は楽なものではないが、宮崎は「25年間生きてきて今、一番サッカーが楽しい」と、この環境を前向きに捉えている。

彼がセルビアでのプレーを望んだ理由はもう1つある。同じセルビア・スーペルリーガでプレーする浅野拓磨選手(パルチザン・ベオグラード)の存在である。「日本サッカー協会の方が浅野選手を偵察しにセルビアに来る際、僕が結果を出していればついでに観てもらえるかもしれないじゃないですか。そういう可能性もありますよね」

「笑われるかもしれないけど」と謙遜しつつ、続けた言葉には覚悟と自信を感じるものだった。

「年齢的にもラストチャンス。ここで結果を出せなければ今後の生き方を変えなければいけないでしょう。けど、逆に結果を出せば日本代表や欧州トップリーグへの道も見えてくるはず。今年、僕が浅野拓磨選手より結果を出したり、直接対決で勝てば、今は伸び悩んで無名な学生選手にとって勇気になるかもしれない。その姿を必ず見せたいと思っています」

FKバチュカの練習風景

3か国での失敗を糧にして

宮崎にとってセルビアは、ポーランド、アメリカ、マレーシアに続く4か国目の海外挑戦となる。コロナ禍でプレー機会がほぼなかったマレーシアを除き、どの国でもストライカーとして評価されなかった事実を重く受け止めている。「練習では自分が一番上手い」と手応えを感じても、評価されるのは試合で得点を決めた選手。プロは結果がすべて。その重要性は本人が一番痛感している。

「自分では良いプレーが出来ていると感じていても、ステップアップしたのは得点やアシストなど分かりやすい結果を出した選手でした。だからこそ、セルビアでは結果に固執するつもりです」

FKバチュカに加入して約1か月。昨年まで東南アジアで生活していたこともあり、欧州の寒さに当初はかなり戸惑ったという。それでも「普段から雪の上を歩くことで体に強い負荷をかけることができる」と、逆境を前向きに捉えることができる精神的タフさを宮崎は持っている。「チームメイトから教えてもらったセルビア語を積極的に使うようにしている」というコミュニケーション術も武器になるだろう。

そうしたオフザピッチの適応力に加え、「セルビアでは対人守備で相手が激しく突っ込んでくる」という同国のサッカースタイルも「抜きやすい」と相性の良さを感じている。今度こそ結果を出し、実力を証明するつもりだ。

雪で覆われるFKバチュカのホームスタジアム

「サッカー選手は試合に出場してこそ。そこに向けて毎日の練習が勝負ですし、常に100%でトレーニングしています。だから、紅白戦のゴールでも自然と喜びで叫んでしまうこともあって(笑)。もうここ結果を出すしか道はないので、周りの目なんて気にしていられない。やり続けていればチャンスを掴めるということをお見せしますよ」

【宮崎崚平インタビュー】ラストチャンスを逃しても――プロサッカー選手の道を探し続けた苦悩と葛藤の日々

2022年3月16日
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1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。現在はスポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆。F1と競馬も好き