禍福相倚のカタルシス ‐満田誠選手が出場機会を得られていない現状の捉え方-

メディア寄稿実績

「風邪でもひいたかな?」

百年構想リーグ開幕戦の先発メンバーに満田誠選手の名前を見つけられなかった際、コンディション不良以外の理由を考えることすらしなかった。2025シーズン序盤に加入後、豊富な運動量と多彩な攻撃のアイデアでチームを牽引。特にシーズン後半に勝ち点を伸ばせたのは彼(と安部柊斗選手)による貢献が大きく、今シーズンのガンバ大阪は“マコのチーム”になる……そう予想していたサポーターは私だけではないだろう。

「何故こんなにすごい選手が広島では出場機会を得られなかっただろう」

昨年、サポーター仲間と語ったテーマだ。まさか今年も同じ会話をすることになるとは。

無論、実際のところは何が起きているかは分からない。対外的に発表できない事情があるかもしれない。ただ、起用法やイェンス ヴィッシング監督のコメントから推測すると満田選手が高い評価を得ているとは言い難い。監督が変わると評価基準も変わるということ。監督が重視する「強度」「前への姿勢」と満田選手のプレースタイルの相性が悪いとは思わないが……。

ベンチ入りするも最後まで出番がなかったラーチャブリーFC戦(アウェイ)から中2日。古巣サンフレッチェ広島戦ではベンチ外。疲労で全く走れないチームメイトの姿に何を思ったか。

サッカー選手に限った話ではなく、どの業界においても評価されない環境で過ごすのは簡単ではない。自身の市場価値が高い場合は目が外に向くこともあるだろう。エージェントを通じて届くスカウトに揺らぐ気持ち。コントロールできない苦難から抜け出す手っ取り早い方法は環境を変えることだが、短期間での移籍を繰り返すことに抵抗があるかもしれない。こうした状況は誰にでも起こりえることだ。

翻弄されるキャリア -松田浩フットボール本部本部長の契約満了から考える『評価』との向き合い方-

2025年11月7日

活躍の陰にあるもの

キャリアを通じて常に高い評価を得られ続ける人間は少ない。役割が変わる、所属が変わる、上司が変わる、時代が変わる……自分との相性は運の要素も大きい。だから、評価されない時間こそ自分に矢印を向けて意味あるものにしなくてはならない。それは私がサッカー選手から何度も学んできたことのひとつである。

例えば石毛秀樹選手。運動力とテクニックを兼ね備えたビッグネームであるが、清水エスパルス時代にはロティーナ監督に、ガンバ大阪時代にはポヤトス監督に満足いく評価を得られなかった時期がある。そうした難しい時間に「自分に足りないことを意識してプラスアルファのトレーニングをすること」がウェリントン・フェニックスFC移籍直後の大活躍に繋がった。

倉田秋選手なんて評価の浮き沈みを何度経験してきたのか。ガンバ大阪の黄金時代である2007年にトップ昇格したことから若手時代は出場機会を求めて他クラブへレンタル移籍。復帰後はレギュラーに定着したもののJ2降格。3冠を獲得した2014年はハイパフォーマンスを見せても阿部浩之選手、大森晃太郎選手とのレギュラー争いを強いられた。主将を務めた2022年はJ1残留争い。ベテランと呼ばれる年齢になってからは本職ではないポジションや不規則なタイミングでの起用が続く……そんな苦難の連続でもJ1通算400試合以上出場しているのはすべての準備を怠っていないから。

日本サッカー界のレジェンドである遠藤保仁コーチですら『シドニー五輪でバックアップメンバー』『ドイツW杯で出場なし』とターニングポイントで苦杯を喫する経験をしているが、その先にキャリアのハイライトである南アフリカW杯での直接FKゴールがある。

サヨナラを伝える前に -遠藤保仁選手の移籍によせて-

2020年10月5日

「ピンチはチャンス」「塞翁が馬」……昔から悪いことと良いことは結びついていると考える言葉は多い。ひとつの真理として個人的にも意識している。

『評価』『世代』『怪我(病気)』など、サッカー選手はコントロールできない割にはキャリアに大きな影響を与える不運と向き合わざるを得ない時がある。ただ、そういう逆境を乗り越えた選手のプレーは人の心を動かす。

逆境を乗り越えて躍動を続ける選手達から学ぶことは多い

満田選手にとって今季初出場となった2月28日清水エスパルス戦後には「いつでも準備できているという思いを持つことは自分の中で大事」とコメントを残している。心配はしていない。あれほどの才能をもった選手だ。きっと次のチャンスを活かすに違いないし、そのタイミングが大阪ダービー(4月11日)だったら……パナスタの雰囲気は『熱狂の2019年』を超えるかもしれない。

Photo:おとがみ

人気記事紹介

ABOUTこの記事をかいた人

大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。スポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営を経て新聞社へ。社会学、映画、読書、F1、競馬、スポーツビジネス、ラーメンが好き。