岩下敬輔選手の“プロレス” -鳴りやまぬ清水航平選手へのブーイングの捉え方-

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過去に起きた“岩下敬輔選手との小競り合い”を背景とした、清水航平選手へのブーイングは試合終了まで続けられた。吹田スタジアムで、あそこまで大きな規模のブーイングが起きたのは初めてのことだ。件の小競り合いに対してネット上の意見は、両選手に対して批判的なものが多かった印象がある。しかし、あれから一定の時間が過ぎ、岩下選手ホームとなる大阪の地での反応は違ったようだ。

村井チェアマン就任以降、優等生路線を推進するJリーグであるが、個人的にはピッチ上の小競り合いも含めて、試合をエンタテイメントとして楽しんでいる。激しいフィジカルコンタクトが伴うサッカーというスポーツの性質上、多少のトラブルは避けられない。超至近距離で罵声を浴びせ合った数分後に笑顔でハグをするような世界だ。差別発言など一線を越えたもの以外は、あまりセンシティブにならない方がいいと考えている。“プロレス”的に捉えた方が、試合を楽しむことができる。

他クラブから批判されがちな岩下選手だが、自クラブからの信頼は厚い

歴史を共有する大切さ

論点を変える。今回のブーイングに観戦(応援)方法の変化を感じたのだ。試合を「点」で見るのではなく「線」で見ている。ブーイングの直接的な要因は、前述の通り、過去に発生した2人(岩下選手と清水選手)の“プロレス”によるところが大きいだろうが、さかのぼれば「ジェソク選手が退場に追い込まれた2015年のチャンピオンシップ」や「青山敏弘選手の審判への陰口事件」など、対サンフレッチェ広島戦に関する因縁の蓄積も影響しているはず。

スタジアムで私の前にいたサポーターが友人に「なんで清水はこんなにブーイングされているの?」と質問しているのを聞いたが、歴史を知れば試合の重みが変わる。重みが変われば、応援する気持ちが高まる。サポーター間で歴史(過去)を共有できれば、スタジアムの一体感は増す。

スタジアムでは酔っ払いのおじさんすら愛せる -SNS時代のオフラインコミュニケーション論-

ブーイングの効果なのか、今節は清水選手へのパスが少なかったように感じた。ブーイングという形でホームアドバンテージを示せた一戦は、応援の在り方を一歩先に進めたように感じた。

兄貴、これからも頼みます

Photos:おとがみ

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1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。現在はスポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆。F1と競馬も好き