過去の私なら「アンチフットボール」として批判していたようなスタイルでも、マイクラブが勝ち点を得た喜びは、昔と何も変わらなかった。
「黄金の中盤」時代の美しいサッカーに未練を残しつつ、第23節サンガ戦における食野選手のゴールのような泥臭さにも心震える。宮本恒靖元監督の座右の銘が身に染みる。“今を生きる”しかないのだと。
例えば、3冠を達成したシーズンと比較して、当時の主軸だったパトリック選手の身体能力は年齢的に落ちているのかもしれない。それでも、第32節F・マリノス戦で決めたゴール後の表情やジャスチャーには本人の苦悩や意地を垣間見ることができ、その想いを含めた形で共に喜び、祝福できる今という時間にも価値がある。
2022シーズン最終節、ガンバ大阪は苦しみながらJ1残留を決めた。
試合終了後、自分達の運命を左右する他会場の結果(試合終了)を待ったのは、J1優勝を決めた2014年と同じ。同じシチュエーションでJ1残留を決めた今年、違ったのは喜びの種類だけ。熱量に差はない。負けて負けて負けて負けて……勝った(引き分けた)。積み重ねた敗戦の記憶の分だけ、ゴールや勝ち点1がもたらすカタルシスは大きかった。
だからこそ、シーズン総括となる本記事で言及したいのは、最も苦しかった時期に献身的なプレーでチームを支えつつも、松田体制以降は出場機会を失った選手達のこと。
そう、逆襲への期待だ。
カシマスタジアムでの最終節。圧倒的劣勢展開の中、交代枠を残しながらも起用されなかった武蔵選手や山見選手はベンチで何を思ったか。そして、ベンチ入りも叶わなかった選手たちは、どのような心境でJ1残留決定の時を迎えたのか。
監督の好み、戦術、チーム状況、コンディション……出場機会を失った理由は様々で、年齢や立場によって、その事実の受け取り方も違うだろうが、苦しんだ分、喜びも大きくなる。来シーズン、彼らが逆襲のガッツポーズを見せてくれた数に比例して、ガンバの成績が復活する未来を期待したい。
長いキャリアで常に順風満帆な選手はいない。今シーズン終盤戦に主力として出場した選手の多くも怪我、不本意な移籍、前体制で構想外……など、直近に難しい時間を過ごしている。そこからの反攻心もハイパフォーマンス、そしてJ1残留に繋がったはず。
今オフは、成績低迷に伴う監督交代や夏の補強もふまえ、主力選手を含めた形で編成は大きく整理されると予想している。新体制下では出場機会を減らしていた選手達にもチャンスが広がる可能性はある。仮に一部メディアで可能性が報じられている松田監督続投の場合でも、新シーズンになれば状況も、序列も変わる。
無論、選手全員がガンバで幸せになれる訳ではないことは分かっている。現実的には退団する選手も出てくるだろう。残留へ導いた主力選手や、決断した松田監督へのリスペクトもある。それでも、スタジアムで声援を送れなかった選手達の逆襲を見たい。応援したいのだ。
残留を決めた喜びの影にある悔しさが、チームをまた強くする。勝負はまだ続く。
2022シーズン、試合出場した全選手に感謝を。練習場で、クラブハウスでチームのために貢献した全選手に敬意を。
Photo:おとがみ
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