試合後、肩を落とす選手達を拍手で迎い入れる川崎フロンターレサポーターを眺めていた。
この試合をもって退任する風間監督へ感謝を示す横断幕が掲げられ、退団する大久保嘉人の挨拶に涙する……あの光景に対して「ぬるい」「サポーターが甘いから負けるんだ」と評する声を聞いた。果たして、そうだろうか。
「タイトルを獲らなければ何も残らない」というのは第三者の視点だ。無冠で終わった風間監督時代の川崎フロンターレのサッカーは数年後、多くの人に忘れられるのかもしれない。ただ、それが川崎サポーターにとっても当てはまるかは分からない。
道は続く。鬼木新監督は継続路線。同じ継続路線で成功した広島の前例(ミシャ監督→森保監督)を考えても、この決勝戦が川崎にとっての集大成にはならないのではないか。
虚無感の先に
ガンバ大阪が勝ち残ることを信じて購入したチケットは、川崎フロンターレ側の指定席だった。ゴール裏が近い席だったので、フロンターレサポーターの決勝戦にかける想いの強さはチャントの声量からも伝わってきた。想いが強ければ強いほど、夢破れた時のショックは大きく、「もしもフロンターレが負ければ……」という視点はこの試合の見所の1つだった。フロンターレサポーターには申し訳ないが、第三者にとって悲劇はエンタテイメントだ。そして、結果は良いサッカーをして負けるというこれ以上ない儚いものとなった。
風間監督と大久保嘉人のラストゲームという点に加え、直前に開催されたCS準決勝敗戦の悔しさも背負った一戦だったと思う。それがこの決勝で力になったのか、重荷になったのかは分からない。ただ、味わった虚無感が大きければ大きいほどクラブへの愛が強まる不思議。補強が進んでいる川崎は来シーズンもきっと強いだろう。
敗戦を否定するブーイングではなく、拍手の先に未来がある。

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