体育館時代の終焉 -JリーグサポーターのBリーグ“新アリーナ”観戦記(群馬&神奈川&千葉編)-

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2018年4月に公開した記事「Jリーグとの比較から考える「ブースター」の応援スタイル -Bリーグ初観戦記-」の続編。

船橋の住宅街にある体育館でBリーグを初観戦してから約7年。この間も秋田ノーザンハピネッツなど「応援がすごい」と評判の数チームの試合を不定期で観戦していた。会場はどこも“体育館”だった。普段、屋外観戦で鍛えられている身としては観戦環境に不満を感じることはなかったが、Bリーグファン界隈から聞こえてきたのは「アリーナが必要だ」という声。

曰く、2026年に開幕する「B.LEAGUE PREMIER(Bプレミア)」のライセンスに起因するもので、改修も含めて全国で10か所以上のアリーナが建設された(ている)。ライセンス的に必要というだけで、企業や自治体はお金を出すものなのか。体育館ではダメなのか。ここまで全国的なムーブメントになっているのには何か理由があるに違いない。

ということで、新アリーナの中でも評判の良い「オープンハウスアリーナ太田(群馬)」「横浜BUNTAI(神奈川)」「LaLa arena TOKYO-BAY(千葉)」でBリーグを観戦して魅力を探った。

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2023年9月8日

ライブハウスへようこそ!

まず驚いたのは、チケット購入が争奪戦なのだ。

観戦した3試合は全て完売。バスケファンの彼女にファンクラブ先行等を駆使して確保してもらったが、気軽にチケットを確保できないコンテンツになっていた。Bリーグの決算資料を見ると、2023-24シーズンのリーグ全体の入場料収入は前年比44.8パーセント増と記載されている。

入場者数はスポーツビジネスの根幹。あらゆる面でポジティブな波及効果があることが想像できる。関東の某Jリーグクラブでスポンサー営業をしている知人が「ライバルは関東圏の他Jクラブではなく、Bリーグチームですよ」と話していたことを思い出した。

チケット購入はコアファンのサポートが必要である一方で、試合観戦は万人が楽しめるものだった。訪問した3つのアリーナに共通しているのは、バスケを知らなくても「演出」で感情が高められるということ。

オープンハウスアリーナ太田

例えば「オープンハウスアリーナ太田」の音響は重低音が体に響き、反射的に体が動いた。観客席から音楽を仕切っているDJの姿も確認でき、バスケ会場というよりも「ライブハウス武道館へようこそ!」(©BOØWY)的な雰囲気に非日常感を覚えた。

また、試合中は基本的に「攻撃時」「守備時」の2パターンで音楽がかるが、試合開始直後にはJリーグクラブでいうところのアンセムが、勝負どころではアップビートの曲が、切替なしに流し続けられるなど“選曲”も秀逸。試合後、真っ先に浮かんだ感想は「次は音楽ライブでこの会場に来たい」だった。

「森田屋支店 太田店」(正田醤油スタジアム群馬)

2024年12月21日

フリースロー時に映し出される謎の映像

Bリーグを観戦するたびに(Jリーグとの比較で)思うのは「エンタメとして楽しんでる人が多い」ということ。音響や照明によるチーム主導の応援スタイルであることも大きいだろうが、客席からの罵声や野次、怒号が非常に少ない(音響が大きいので周囲の声が聞こえにくいという面もある)。「横浜BUNTAI」で相手フリースロー時にビジョンに気を逸らすユーモラスな映像が映し出される演出は、Bリーグの空気感をよく表している。

Jリーグサポーターが重視する「応援の自治性」の観点からは賛否(好き嫌い)はあるだろうが、誹謗中傷問題が悪化の一途をたどる日本スポーツ界において、両チームのブースターが同エリアの座席に混ざって座り、アリーナMCがビジターチームの選手紹介も丁寧に行う空間が支持が集まるのは必然かもしれない。

オカムラ、オカムラ、オカムラホーーーム!

新アリーナ探索ツアーの最後に訪れたのが、千葉ジェッツのホーム「LaLa arena TOKYO-BAY」。1万人キャパとは思えない臨場感や十分なトイレの数、カッコいい攻撃時の音楽、敗戦後も行われる監督インタビューなど素晴らしい面は多々あったが、他の2アリーナと比較して優れていたのはスポンサーアクティベーション。

試合開始50分前に「オープニングフライト(エンターテイメントショー)」が開催されるので、その時点で80%程度の着席率がある。その後に冠試合を務めるスポンサー企業の社長の挨拶が行われたり、ビジョンでCMで流されるのは広告効果的に素晴らしいタイムスケジュール。

チアによるパフォーマンスの様子

そして、驚いたのはブースターの応援にもスポンサーアクティベーションが組み込まれていること。フリースローを決めると『オカムラ、オカムラ、オカムラホーーーム!」というBGMが流れた後に全員で『GoーーJets!!』の大合唱。最初に聞いた時は「なぜ、このタイミングでスポンサー名!?」と戸惑いもあったが、中毒性が高く、試合終盤には「誰かファールしないかな~」とフリースローを期待している自分がいた。この先の人生で千葉で家を建てる機会があれば、きっとオカムラホームにお願いするだろう。

まとめ

ここまでアリーナの素晴らしさを書いてきたが、観戦した3試合はどれも緊張感のある素晴らしい接戦だった。

11/2 群馬クレインサンダーズ 82-81 滋賀レイクス
12/7 横浜ビー・コルセアーズ 80-72 宇都宮ブレックス
2/1 千葉ジェッツ 66-67 横浜ビー・コルセアーズ

大量に得点が入るスポーツであることが影響しているのか、試合の主導権が頻繁に移るので結果が読めない面白さがある。勝っても負けても試合後には両チームを称える会場の雰囲気も好きだ。

ビジネス的に成長著しいBリーグ。現場の熱量をふまえると発展は続きそう。幅広い客層に、チケットが取りにくい新アリーナ。きっと放送(配信)権料もあがるだろうし、スポンサーになりたい企業も増える。

そして、それを牽引している要因の1つに間違いなく“アリーナ”がある。

今後は「長崎」「沖縄」「佐賀」あたりをアリーナを開拓する予定。この記事で紹介した3アリーナとは違った楽しみを経験できることを期待している。

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2023年10月6日
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1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。現在はスポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆。F1と競馬も好き