熱量の伝播がもたらした一体感 -ガンバ大阪2024シーズン総括-

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昨シーズンのガンバ大阪を総括するキーワードとして話題になったのは「一体感の欠如」だった。好成績を残した他クラブ関係者が「団結」や「連帯」といった言葉を勝因として挙げているのを見聞きするたびに、もどかしい気持ちになったことを覚えている。

ただ、監督や社長といったトップ人事をはじめ、選手も数年単位で入れ替わる個人事業主の集まりであるクラブの組織特性を考えると、一体感を生み出すのは決して簡単なことではない。既述の報道を見た時に「仕方ないところもあるよなぁ……」と思ったこともまた事実である。

そして迎えた2024シーズン。約1/3の選手が入れ替わったチーム編成、フットボール本部の新設など、新旧メンバー間でのハレーションリスクは低くないように見えた。新しい刺激が諸刃の剣であることは、組織に属したことのある人間であれば1度や2度は経験があるはず。

しかし、そんな心配は杞憂に終わる。

開幕前に目標として掲げた7位以上に対し、堂々の4位フィニッシュ。近年の低迷が嘘のような躍進を遂げた。全員のハードワークをベースとした堅守に代表されるように、ピッチ上の選手からはフォアザチームの気持ちをシーズンを通して感じることができた。

その要因は何か。最終節後に行われた宇佐美主将の挨拶から推測するならば、「熱量」がチームを1つにしたということか。確かに今シーズンはクラブ各所から熱源を感じることは多かった。

経験ある新加入選手達の言動、『技術委員会』の開催を通じて部署間の連携を図った松田浩フットボール本部 本部長のマネジメント、選手たちから定期的に言及される遠藤保仁コーチのサポート、在籍3年目となった梨本健斗アナリストによるスカウティング、アヤックスとの提携費用対効果だけでは語れないスポンサーの支援、クラブ年間入場者数が495,832人を記録したサポーターの応援……熱量は伝播する。皆の仕事や行動が結果に繋がったのは素晴らしいことだ。

無論、光があるところには影も生まれる。チームが結果を残したシーズンだからこそ、その裏で苦難のシーズンを過ごした人がいることにも目を向けられる人間でありたい。2024年は違う道を歩むことになった選手の好調(逆襲)を目にする機会の多いシーズンだったことも、気持ちを明るくさせてくれた。

最終節を終え、来季の編成に一喜一憂するシーズンオフに突入。きっと別れもあるだろう。誰がどんな選択をしようとも、今年ガンバで戦った選手やスタッフの未来が明るいものになることを祈っている。

最終節セレモニーでスタッフに感謝を述べるポヤトス監督。来シーズンは勝負の就任3年目

「日本を代表するスポーツエクスペリエンスブランド」の具現化

事業面に目を向けると、こちらも飛躍の1年として記憶されるシーズンになった。若手メンバーを中心とした部署横断で運営される「モフレムプロジェクト」の本格化、パナソニックスポーツとの関係が強化されていることが伝わる大阪ブルテオンや大阪エヴッサとのコラボ、新規ファン開拓を意識した番組内容にリニューアルされた「ガンバTV」……etc.

すっかり定着した「GAMBA EXPO」や「GAMBA SONIC」に続く、マネタイズや広報において定番になりそうな施策が続々と企画運営された。クラブ創設30周年を機にクラブコンセプトを発表して以降、推進してきた《日本を代表するスポーツエクスペリエンスブランド》の未来像が急速に具現化された印象だ。

スタジアムや遠征先での「ぬい撮り」がサポーター間で流行

近年は事業施策に力を入れれれば入れるほど「そんなことよりチームの成績を……」といった趣旨の意見が寄せられてきたが、競技面の成績が好調だったことは事業面にポジティブな影響があったはず。クラブ経営における両輪の回転数が増した2024シーズンのガンバ大阪。中期目標として言及されている『営業収益100億円』の実現へ一歩近づいた。

最終節翌日、来シーズンは社長を含めた人事体制が変更されることが発表された。経緯や目的はまだ見えないところも多いが、変化を続けるクラブを応援したい。

最後に今シーズンも楽しい時間をありがとうございました。お世話になったサポーター仲間、クラブ社員の皆様、スポンサーの皆様をはじめとするサッカー仲間全員に感謝します。良いお年を。

涙の意味 -藤春廣輝選手の契約満了によせて-

2023年12月3日

Photos:おとがみ

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1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。現在はスポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆。F1と競馬も好き