敗戦をチャンスに -今、ガンバ大阪のオフザピッチが面白い-

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ガンバ大阪の調子が上がらない。

9試合を終えて、2勝4分3敗の勝ち点10。開幕プレビュー記事で言及した「カタノサッカー構築には時間がかかるのでは?」という懸念が現実のものになっており、チームは“パトポン”スタイルからの脱却に苦しんでいる。新監督になって数か月で勝てるほどJリーグは甘くなかった。

そして、勝ち点以上に厳しいのがスタジアムの入場者数だ。「無料チケットの配布」といったダイレクトに集客に繋げる施策も行っているが、大きな効果は得られていない。

「コロナが落ち着くまでの我慢」を合言葉に入場者数規制の日々を耐え忍んできたが、規制が緩和された今も観客が戻ってこない現状に強い危機感を覚えている。

そんな帰属意識高めな自称“コアサポ”の私も、コロナ以前と比べるとスタジアム観戦の頻度は落ちた。感染者数が多かった時期は「俺、都民だから嫌がられるかな……」と関西のサポ仲間を観戦に誘うことをためらうこともあった。自宅のTV(DAZN)でJリーグ観戦をすることに、良くも悪くも慣れてしまったところもある。コロナは間違いなく、私を、世界を変えた。

スポーツビジネス勉強元年

チームは勝てず、観客も戻ってこない。難しい状況であるのは間違いないが、長いスパンで考えた時にネガティブなことばかりではないとも思っている。

経営が順調だった時には行われなかったであろう「クラウドファンディング」や、J1他クラブに目を向ければ、湘南ベルマーレ、アビスパ福岡で導入されている「トークン」など、サポーターが直接的(経済的)に支える座組みが定着しつつあることはその一つ。

私はクラブはサポーターとの共創を推進すべきという問題意識を持っているので(このテーマで修士論文も書いた)、コロナ禍で進展が見られることは嬉しい。

もうサッカー界はコロナ前には戻れないであろう中で、生き残るため、発展するためには「+α」が求められている。例えば、ガンバの場合は「CHEERPHONE」や「防災キャンプ」がそれに当たる。共にGBA(ガンバ大阪ビジネスアカデミー)発の企画であるが、受講者の意見がこうして形になるのはまさに共創であるし、GBA第1期生からガンバ大阪の社員になられた方が出たことは象徴的な出来事だ。

サポーターの関心はオンザピッチに集中している。試合(選手)がクラブの主力商品であり、当然のことではあるのだが、コロナ禍の経営難で奮闘するフロントスタッフ(ビジネスサイド)に注目することで見えてくるクラブの魅力はきっとある。

先週、フロントスタッフの労働環境をテーマとした記事が話題になったが、コロナ禍の今だからこそ、こういう露出に比例する形でオフザピッチへの関心が高まり、理解者が増えることを望んでいる。私も情報発信の部分で貢献したい。敗戦後、クラブ公式アカウントにクソリプを飛ばしても状況は改善しない。

続々とクラブから新企画が発表されるここ数年は、スポーツビジネスの勉強を始めるタイミングとしても最適。サポーターが応援する対象は選手だけと決められている訳ではないし、フロントスタッフの推しを見つける……なんて楽しみ方もサポーターライフの幅を広げてくれるかもしれない。

ガンバ大阪のチャント「俺らにできること」の歌詞は、“歌うこと”でクラブを応援しようと訴えている。それが禁止されている今、自分には何ができるのだろうか。湘南ベルマーレ戦の後、明らかに怒りを抑えながらインタビューに応える片野坂監督の様子を観ながらそんなことを考えた。

Photos:おとがみ

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1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。現在はスポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆。F1と競馬も好き