横浜DeNAベイスターズの社員一人ひとりにフォーカスをあて、担当した施策を紹介する形で組織改革の裏側を紐解いた「ベイスターズ再建録」。今シーズンオフに読んだこの本は、スポーツビジネスの現場をリアリティをもって知ることができ、参考になった。
「同じような内容のサッカー本はないかな……」と、見つけたのがコレ。2023シーズンJリーグ開幕直前の2月13日発売。色々とドンピシャのタイミングで楽しませてもらった。
書籍概要
書籍名:愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方
著者:原田大輔
発行:小学館クリエイティブ
価格:1,980円
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スポーツの枠を超えた、フロンターレ思考
社員を中心とした23名への取材を通じて、川崎フロンターレ創立からの26年間を振り返る一冊。基本的には「事業面」にフォーカスされた内容となっており、第1章で登場する「武田信平氏(元代表取締役社長)」「庄子春男氏(エグゼクティブアドバイザー)」「中西哲生氏(クラブ特命大志)」など、クラブの礎を築いた人達をはじめ、長くクラブに携わった方の証言が掲載されている。
驚きだったのは、過去に天野春果氏(タウンコミュニケーション事業部 部長)の書著を読んでいたこともあるだろうが、本書に掲載されているクラブ史の多くを、他クラブのサポーターである私が知っていたこと。
こうした情報発信力はフロンターレの強みで、第2章ではフロンターレがいかにして“攻めの広報”にシフトしたのかという経緯も紹介されている。そうした背景を含めて、クラブ史における重要な活動や、関連社員の想いを知ることができるのが、この本の魅力である。
また、全体を通じて、組織が「ビジョン」を掲げる意義をよく理解できた。フロンターレの場合は【地域性】【社会性】【話題性】……競技面でもそうであるように、困った時に立ち返る“軸”を持っているチームは強い。
詳細の記述はネタバレも含んでしまうので避けるが、クラブの考え方や施策は(苦難の)経験をベースとして、一歩ずつ前進する過程で生まれているように感じた。いわゆる“机上の空論”のような話が1つも出てこなかったことが印象的。サッカー界とは関係ないところで働く人にとっても、行動指針として参考になる話は多い。
今後は「強くなった(お客さんが来るようになった)フロンターレ」しか知らない世代のスタッフや選手に対する“過去の継承”が課題になるという。歴史を重ねたからこその悩みだが、一組織に留まらず、あらゆるステークホルダーを巻き込んで活動を続けるフロンターレの基盤は、社員が思っている以上に盤石なのでは……これが本書を読み終えた後に最初に思ったことだった。
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