長年ガンバ大阪の番記者を務められている下薗昌記氏の最新作。2015年に発売された「ラストピース」以来、5年ぶりとなる書籍のテーマは“育成”。
宮本恒靖、稲本潤一、二川孝広、家長昭博、宇佐美貴史、堂安律……数々のスターを輩出してきたガンバユースが、現在の指導方針に至った経緯を上野山信行氏や鴨川幸司氏などの言葉から振り返る章から本書はスタート。ガンバ大阪U-23の試行錯誤、OB人事、(アカデミーではなく)高体連・大卒選手獲得の狙い……など、ガンバの育成事情について知りたい情報が盛り沢山の内容となっている。
特に下薗氏が他メディアでも言及されていた、松波さんのセレッソU-18コーチ就任の理由など、人事関連のネタは初めて知る話ばかりでとても面白かった。森下監督、明神コーチの招集、實好さんの退団……この本を読めばそれぞれの人事に対する印象も変わる……かもしれない。
書籍概要
書籍名:反骨心 -ガンバ大阪の育成哲学-
著者:下薗昌記
発行:三栄書房
価格:1,650円(税別)
詳細はこちら
森下監督と飛躍した選手達
一番面白かったのは、現在のガンバ大阪U-23について言及されている章。トップチームと完全隔離となり、U-23の練習が一時期“6人”になっていたのは有名な話だが、そうした逆境から飛躍した食野選手や福田選手の想い。そして、そんな彼らを腐らせることなく、復活させた森下監督の育成哲学。本書のタイトルである「反骨心」はこの部分に強く感じた。
読み終えた上で、一言で本書の感想をまとめるならば「すべては繋がっている」ということ。森下監督が高い熱量で指導を続けられたのは、現役時代の苦労が背景にあったというエピソードに代表されるように、ピンチはチャンスだったりする。難しい状況下で全力を出した人間だけが、未来で勝てる。では、今シーズンはどうなるのか。ガンバ大阪U-23が解散する来年以降の森下監督の去就は。京都サンガで監督を始める實好さんからも目が離せない……Jリーグ観戦の見所を増やしてくれる一冊だった。

コメントを残す