誰の人生にもターニングポイントがある。リアルタイムで自覚的になれる時もあれば、振り返った際に気付く時もある。そんな“分岐点”をテーマとしたJリーガー19人に対するインタビュー集を紹介する。
本書内で紹介されている各選手の分岐点は「やっぱり、そこだよね」と、サポーターの共感を得られやすいエピソード(時間)が中心。選手が当時、何を考え、どのように消化し行動したのか。それを知ることで、選手をより理解し、尊敬の気持ちが増し、自身の行動を捉えなおすきっかけにもなる。
書籍概要
書籍名:黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点
著者:飯尾篤史
発行:ソルメディア
価格:1,500円(税別)
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橋本英郎の黄金の1年
ハッシーの分岐点はガンバがJリーグ初優勝した2005年。ユースの同期に稲本や新井場、トップ昇格後はヤットなど、同年代に強烈なライバルが同じクラブに所属し続ける環境下で考えたこと……それは複数のポジションを務める“ポリバレント”な能力を磨くことだった。
2005年におけるハッシーの急成長ぶりは強く記憶に残っている。スペシャルな能力は持っていないながらも、様々なポジションで出場機会を増やし、シーズン中盤にはクラブにとって欠かせない存在となった過程は、現在も若手選手の成長過程を応援する上で重要な経験になっている。
西野体制時代のガンバ大阪は「研究されてもあまり気にせず、自分たちのスタイルを貫くところがあった」(橋本英郎)ゆえ、守備局面においては選手達のアドリブに頼る部分が大きく、ハッシーのインテリジェンスにギリギリ助けられたシーンは数知れない。
エリートでないからこそ、自分と向き合い、生きる術を真剣に考えた結果として今の立場があるということ。ハッシーの言葉からは“逆境はチャンスになる”可能性を含んでいることを教えてくれる。
抽象性が高いサッカーというスポーツにおいて、言語化能力の高いハッシーの本領発揮は実は引退後(監督業)ではないかと密かに期待している。
今野泰幸の黄金の1年
何選手かのターニングポイントで共通しているのは、ネガティブに捉えていた時間が数年後にキャリアを発展させた時間であったと、“後から”自覚したという点。
今ちゃんの分岐点はガンバ移籍前の2009年。FC東京で城福監督からCBにコンバートされたシーズン。「ボランチ失格」という監督の判断にショックを受けるも、CBでのプレーが評価された日本代表選出、日本代表でのヤットとの縦関係(CBとボランチ)経験によるプレー幅の広がりが語られている。
他にも、中村俊輔選手や小笠原満男選手など、日本を代表するレジェンド達も登場する。様々な分岐点の解釈はサッカー、そして、人生の解釈に新しい視点をもたらしてくれる。

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