Jリーグ百年構想リーグを観戦した時の話。スタジアムに到着して、スタグルのもちもちポテトを食べながら選手たちがウォーミングアップを始めるのを待っていた。何気なくスタジアムビジョンを眺めると、Jリーグのパートナー(スポンサー)紹介映像が流れ始める。
タイトルパートナーの明治安田から始まって、ブロードキャスティングパートナー、トップパートナー、スポーツ振興パートナー、チケッティングパートナー、ECプラットフォームパートナー、テクノロジーパートナー、ボールパートナー、エクイップメントパートナー……と企業名のアナウンスが続く中で、ある疑問が頭に浮かぶ。
「パートナーの種類ってこんなにあったっけ?」
2026/27シーズンの開幕前、Jリーグ公式HPに答えが掲載される。曰く、カテゴリーの細分化は「各パートナーがJリーグのどの領域を支えてくださっているかをより分かりやすくお伝えする」ことを目的としており、ビジョンで紹介されている以外にも細かくパートナーの活動領域が指定されているようだ。

昨日のフクアリでも試合前にスポンサーが紹介されていた
確かに企業によってパートナー契約を締結する理由は違う。今の時代に「広告宣伝」(のみを)目的とするのは少数派なのだろう。
パートナーシップの世界では「CSV(Creating Shared Value)」という言葉が流行っているらしい。日本語にすると「共通価値の創造」。サッカーが絡むと日々の業務では使わないビジネス用語も頭に入るから不思議だ。企業の重視することが露出量や地域貢献(CSR)から変化しつつあるのは身近なガンバの事例でも感じるところ。
2023年からパートナーとなったヒュンメルは児童養護施設サッカー教室や介護予防事業などを例に挙げて「北摂や大阪を暮らしやすい街にする貢献をしたい」と明言しているし、きしもと泌尿器科クリニックは「キャリア教育」の業域にフォーカスして協賛を続けている。
法人コミュニティである「ガンバ大阪・クラブ連携ビジネスサロン」では「万博公園周辺の渋滞を軽減」なんてローカルな課題についてディスカッションが行われたらしい。ガンバから「渋滞緩和パートナー」新規契約のニュースが発表される日も遠くないのかもしれない。
最近の例では「アビスパ福岡×ふくや」のパートナー契約も取組内容が話題になった。金額とともに目的が評価される時代。要はサッカークラブやリーグと組むことで顕在化(解決)できる社会課題があるということ。Jリーグがパートナーカテゴリーを細分化する意義を理解できた。
試合翌日問題
私がJリーグのパートナー営業担当であれば、どんな社会課題の解決を目指すか(≒パートナーを探す)を考えてみることにする。当事者意識が高いのはJリーグサポーターの長所のひとつだ。
最初に思い付いたのは「試合翌日問題」である。安くないお金を払って遠征するからには試合“+α”を楽しみたい。試合当日に課題はない。移動して、試合を観て、ご飯を食べれば1日を満喫できる。肝心なのは試合翌日。サポーター歴が長くなればなるほど定番観光地は何度も訪問しているので、やること(行くところ)がないのだ。

先月のアウェイ名古屋遠征で15年ぶりに訪問した名古屋城
これを社会課題として捉えることの是非はあるだろう。視点を少し変えてみる。
例えばアウェイ佐賀(サガン鳥栖)遠征。多くのサポーターが試合以外の時間を隣県の福岡で過ごしている。これは佐賀県にとっては課題であるはず。佐賀でお金を使ってもらうためにはどうしたらいいのものか……馬だ!甦るサポーター仲間と訪ねた「さがけいば」の記憶。週末開催のスポーツイベントとJリーグを組み合わせる施策は相性がいいはず。

佐賀競馬場にはJリーグサポーターの姿もチラホラ
良いアイデアだと思ったら、既にサガン鳥栖が「さがけいば」とパートナー契約を締結していた。ちなみにJリーグも「JTB」とポーティングカンパニー契約を締結しており、アウェーツーリズムの発展にむけて共創していくとのこと。「試合翌日問題」が解決する日は近い。
スポーツビジネスへの低関心問題
次に考えたのは「クラブやリーグ経営への関心」について。
Jリーグチェアマンの野々村芳和さんがスカパー!で番組MCを務めていた際に最も発信していたテーマの1つが「クラブの成績と選手人件費の相関関係」。お金があるクラブが勝つ。稼ぐことはスポーツビジネスにおいて正義であり、クラブやリーグの事業施策(経営状況)を理解することは選手に声援を送ることに近い意義がある。
このテーマで思い出すのは、2015年~2016年の期間限定でJリーグに導入(復活)された「2ステージ制」への批判。当時のJリーグ経営状況的に“やむを得ない”決断だった訳だが、この決定に対する反対意見のうち背景をふまえたものがどれだけあっただろうか。プロの世界に批評はあってしかるべきだ。多くのステークホルダーを巻き込んだ議論にも意義がある。ただ、理屈なき感情論は誹謗中傷に近い。
一方で、同時期にリーグのビジネス面に関する発信がさほど多くなかったことも事実である。「サッカー批評」くらいでしか見た記憶がない。メディア施策に強い野々村さんのチェアマン就任で改善したはいえ、ピッチ内の出来事と比較してピッチ外への関心が低いのは引き続きの課題。より多くの人に興味をもってもらえる形でビジネス情報を伝えられるメディア(ニュースプラットフォーム)との提携で解決を探るべきなのではないか。
……と思ったら、こちらもJリーグが既に「ユーザベース(NewsPicks)」とポーティングカンパニー契約を締結していた。具体的な施策は少しずつ発表されるのだろうが、今後の取り組みとして「全国各地のクラブホームタウンにおけるスポーツと経済の新たな接点を創出」と記載があり、双方にとって必然性の高いCSVだと感じる。
パートナーシップの仕事
パートナー(スポンサー)……サッカーを媒体として法人を繋ぎ、社会課題を解決する仕事への関心からこの記事を書いた。リーグ(クラブ)と企業、双方がサッカーの可能性を信じているからこそ築ける継続的な関係性。サッカーファンとしてはドリームジョブだ。
時代によってスポーツの役割は変わるが、昨今の公共性の高い活動が期待されるトレンドはしばらく続くだろう。それは社会におけるサッカーの存在感が高まることでもある。スポーツビジネスの売上においてパートナーシップの額が大きな比率を占める理由がそこにある。



















