2023シーズン第13節。対浦和レッズ戦。埼玉スタジアムで目にした光景は、寂しいものだった。
失点直後、試合終了を待たずに席を立つサポーター。試合後、不貞腐れたようにも見える態度でゴール裏に挨拶をする選手達。
ネガティブな側面をフォーカスして、危機感を煽るつもりはない。ただ、“前兆”として、無視できない事象である。勝てない時こそ、選手、サポーターの一体感が必要にも関わらず、お互いに本気だからこそ、負けることで衝突し、心の距離が離れていく悲しさ。
難しい時期に求められる心構えとは何なのか。
福岡将太選手、半田陸選手らの選択
何度か書いている通り、私がガンバ大阪に何十年も惹かれている理由は「一体感」だ。特に近年はあらゆるコミュニティが細分化している影響もあるのか、他者と同じ感情や思想を共有することが難しくなっている。何万という人とシンプルに「ガンバ頑張れ!」で繋がれるスタジアムでの感動は、他の何物にも代えがたい。
しかし……である。
続く敗戦に、サポーターは選手(監督、フロント)を批判し、選手は(リアクションとして?)不貞腐れた挨拶を行い、サポーターがサポーターを批判することも……積み重なる相互不信。身内批判は負のスパイラルを生む。一体感にはほど遠い。
J2降格が決まった2012シーズンは最終節まで熱量は落ちていなかったと理解している。一方で、今年は長期間に及ぶ低迷を背景として“白けている”雰囲気がある。浦和戦後、相手サポーターの「J2大阪コール」に一部ガンバサポーターが手拍子で応えていたのは一例だろう。心配だ。
第三者の立場で言及するつもりはない。私も当事者として、ゴール裏の雰囲気に同調する形でブーイングをした経験があるし、スタジアムで他者の影響を受けずに行動するのは難しいことも理解している。既述の件も個々の本心とは違う形で、集団心理に流された結果だったのかもしれない。そして、その難しさはゴール裏も、ピッチ上のチーム(選手達)もきっと同じ。
だからこそ、埼スタでの試合後挨拶で、最後までサポーターと向き合い続けた選手もいたことを忘れてはいけない。そうした態度を取った中に福岡将太、半田陸ら在籍年数の少ない選手が含まれていたことは強く印象に残っている。在籍年数の長い年長者を含む、他選手のリアクションを考えれば、彼らの選択は簡単じゃない。
試合直後はネガティブな面にばかり目が向いていたが、時間の経過とともに思い出す頻度が増えたのは、そんな彼らの真摯な姿だ。振り返れば、G.W.初戦のアウェイ鹿島戦でも試合前、ゴール裏に応援を呼び掛けたのはこの2人だった。
「難しい時期に求められる心構えとは何なのか」――。
現時点での答えは、当事者でいること。目を背けないこと。
不貞腐れるのは一番簡単な選択だ。客観視を気取ってクラブを批評したり、無粋に冷静さを装うことも同じ。もうしばらく厳しい試合は続きそうな気配だが、どんな結果であっても、福岡選手や半田選手と対面した時に、サポーターとして恥ずかしくないように振る舞いたい。
Photo:おとがみ
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