東欧を中心に16の国と地域のサッカー文化を知ることができる長束恭行さんのルポタージュ本。ワールドカップ期間の読書におススメ。テイストは違えど、現地のリアリティや文化的な側面からのアプローチは海外版宇都宮徹壱さんという印象も受けた。
著者の長束さんは海外サッカー旅行をきっかけに人生観が変わって脱サラ、欧州サッカー観戦をライフワークとする生活に変えたというサッカークレイジー。そんな長束さんの圧倒的なサッカーへの愛を感じることができる一冊。
書籍概要
書籍名:東欧サッカークロニクル
筆者:長束恭行
発行:内外出版社
価格:1,700円(税別)
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最強フーリガン集団「BBB」とのアウェイ遠征
あまり馴染みのない東欧サッカーが舞台なので新発見は多い。“サポーター”という切口では、日本とワールドカップで対戦するポーランドの章が興味深い。この国では通常、敵対するクラブのサポーター同士が「協定」を結び同じゴール裏で試合を応援する文化が存在するのだという。
そうかと思えば、ラトビアでは民族問題が影響し、同じクラブを応援するサポーターが分裂したエピソードが。アイデンティティの違いを越えて一体感をもたらすのがスポーツであると考えていたが、綺麗ごとだけでは解決しない世界のリアルを垣間見た。
最大の読みどころはディナモ・ザグレブを応援するフーリガン集団「BBB」(バッド・ブルー・ボーイズ)との往復3000キロのアウェイ遠征記。ビール、賄賂、たかり、警察、喧嘩、ナンパ、万引き……日本のアウェイ遠征からは全く想像がつかないエピソードのオンパレード。リアルなフーリガンの実態を知ることができる。本書からはそうしたフーリガンの行動を非難するだけではなく、ある種のリスペクトも持って長束さんが接していることが伝わってくる。野蛮さや下品さは頼りがいでもあるし、クラブへの愛や行動力は魅力的だ。自分(Jリーグサポーター)にないものを持っていることは確かで、フーリガンの生き方にある種の憧れを持つ人が一定数いるのは理解できる。
サッカーの愛し方は多様だ。

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