過去ワールドカップの度に総括するに相応しいコンテンツがリリースされている。2002年日韓ワールドカップの「六月の勝利の歌を忘れない」、2006年ドイツワールドカップの「敗因と」、2014年ブラジルワールドカップの「通訳日記」など(2010年はベストを思い出せない)。そして、2018年ロシアワールドカップの総括としては今回紹介する一冊を推薦したい。
書籍概要
書籍名:4年8か月の激闘
筆者:手倉森誠
発行:角川書店
価格:1,500円(税別)
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手倉森コーチのハリルホジッチ評
手倉森氏がリオ五輪~ロシアワールドカップまで監督やコーチとして現場の最前線での経験した4年8か月を振り返る内容となっている。プロローグに「私がこの本を書いたのは、自分の経験を個人的な財産にしてはいけないと考えるからだ」と書いてある通り、アギーレ→ハリル→西野朗と監督交代が続いた日本代表スタッフの中で一番長く身近で現場を見てきたスタッフである人間の言葉は重要な財産であろう。最後には手倉森氏が考える日本代表のあるべきスタイルや日本代表監督論も記載されている。
何かのエピソードにフォーカスすることなく、時系列にエピソードを紹介する編集となっているので読みどころは読者によって意見が分かれそう。ミーハー的にはボロボロの結果に終わったリオ五輪時におけるチームマネジメント話は興味深い。OAの選考基準、久保招集失敗の裏側あたりは多くの人にとって興味があるであろう部分。ロシアワールドカップに関してもハリル→西野という激動の中で、継続スタッフであった手倉森コーチが何に腐心し、西野朗監督がどのようなマネジメントを行っていたのかを垣間見ることができる。ベルギー戦の選評も読みごたえあり。
個人的に一番面白かったのは手倉森氏のハリル評。出会いからあまりいい印象は持っていなかった様子。基本的にリスペクトありきなので、直接的な批判の表現こそ登場しないが、ハリル氏の“上から目線”な態度や、コーチの助言を受け入れないチームマネジメントには不満を持っていたことは行間から滲み出ていた。ハリル氏の頑固で気難しい側面を窺い知れ、手倉森氏の心労を慮らずにはいられなかった。
メディアを通じた手倉森監督は“面白おじさん”という印象が強かったが、本書全体を通じてリアリストな考えが多かったのは意外な発見。ロマンはないが、記載されている「メンバー選考」や「戦術」の考え方からは結果を最優先に考えるプロとしての顔も(当たり前だが)。一方で、チームの雰囲気醸成のため感情へのマネジメントを重視する姿勢はイメージ通りであり、若手選手との相性が良さそうという印象も持った。代表での経験が2019シーズンより指揮を執る長崎でどう発揮されるのか注目したい。
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