2020年フットサルワールドカップの日本誘致活動がいよいよ佳境を迎える中で、過去事例を把握したいと読んだ一冊。テーマは「2002年日韓ワールドカップの招致活動」。取材期間はなんと10年間。読み応え抜群。「長野オリンピック騒動記」しかり、メガイベントの日本誘致をテーマとしたスポーツ本は名作が多い。
書籍概要
書籍名:日韓ワールドカップの覚書
筆者:川端康生
発行:講談社
価格:1,600円(税別)
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個人的な想いから、オールジャパンのプロジェクトへ
きっかけは、日本サッカー協会に所属する村田忠男氏の個人的な想いだったという。「日本代表がワールドカップに出場するためにはどうしたらいいのか」。その方法論として考えたのが“ワールドカップ開催”だった。突飛な印象も受けるが、何事も第一歩はこんなものかもしれない。
そんな個人的な想いを機にスタートした活動(招致活動)の規模が、どんどん大きくなっていく過程が本作の読みどころ。招致活動と並行して立ち上げられた「Jリーグ」、水面下で激しさを増す韓国との招致競争、共催が決定した後のFIFAや韓国や財界との渉外(調整)……想像がつかないほど大きな規模で、各ステークホルダーの思惑が複雑に絡み合う様は、TBS日曜劇場のドラマを見ている様。
また、(単独開催ではなく)共催となったことによるダメージが、現在も色濃く残ることを再認識させられた。青森県、京都府、広島県……開催地争いの敗者が、その後のスタジアム建設(及び、県内のサッカー気運)においても苦労していることは、多くのサッカーファンも知るところ。
日韓ワールドカップを、“日韓友好”のきっかけとなったイベントと捉えている人もいるだろうし、メディアの報道でもそうした総括をよく目にした記憶があるが、現実はそんなに甘いものではない。いつかワールドカップを単独開催して欲しい。読了後、その想いを強く持った。
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