これまでガンバ大阪のヒーローはどこか隙があった。ピッチでの輝きと良い意味でのギャップが存在した。ヤット(遠藤保仁選手)はハーフタイム中のシャワーや運転の遅さに代表される極端な「マイペース」な一面を持ち合わせているし、今ちゃん(今野泰幸選手)は「舌をかんで死のうかと思った」でお馴染みの情緒不安定キャラ、フタ(二川孝広選手)に関してはピッチ外では何も喋らなかった。お笑い文化が根付く大阪という土地柄との相性の良さもあり、サポーターからの“ツッコミ”を受けながら皆、愛されていった。
そうしたヒーローの系譜に革命が起きる。“ツネ様”こと宮本恒靖監督である。
宮本恒靖監督の誕生はガンバ大阪のヒーローにおける新時代の到来を予感させる。男前、オシャレ、(同志社)大学卒、FIFAマスター、日本代表キャプテン……そして、今シーズンのスクランブル監督就任からの大挽回劇……ツッコミどころがない。
宮本監督に関するメディアの報道を数点紹介する。
そう言ってひと息つき、コーヒーを口にした宮本恒靖。なんだろう、この異様なまでの風格とカリスマ性は。もう20年近い付き合いになるが、再会するたびにその斬新なアイデアに圧倒され、深みのある人間性に引き込まれてしまう。すべてが自然体で、男が惚れる男。何歳になってもカッコイイはずである。(サッカーダイジェスト)
負けた後の監督会見でも、宮本はまったく動じていない。決然とした表情で、論理的に物事を説明する。それはリーダーとしての風格というのか。(現代ビジネス)
現役時代には卓越した戦術眼とサッカーIQで日本代表の主将も務めた名プレーヤーは、その能力を今度はチームを率いる立場でピッチ上に落とし込んで古巣を復活させた。(フットボールチャンネル)
どの媒体も「知性」や「容姿(男前)」を賞賛する形で宮本監督を紹介する。ステレオタイプがここまで確立されている監督も珍しく、その文脈で扱われないものはサポーターから異質と捉えられてしまうレベルにある(例外はファン感における「ジェソクの顔面パイ投げ」。終盤ジェソクがレギュラーから外れた遠因かもしれない)。「ツネコレ」など、本人がそのイメージを意識しているように見受けられる部分もあり、FIFAマスターではセルフブランディングも学んだのかもしれない。久しぶりの写真集発売も近い気がする。
知性の中にある“熱さ”
そんな宮本監督評の中でも個人的に一番重要だと感じているのは選手の言葉を引用する形で登場する「情熱」だ。
日本代表GK東口は「熱い人だなと。簡単なことをしなかった選手には『何でしなかったんだ!』と。それでピリッとする」と指導ぶりを明かした。選手の自主性に任せたクルピ前監督から、ムードは一転だ。(サンケイスポーツ)
これこそガンバ残留の最大の要因であると感じている。戦うことへの意識付けの徹底。F・マリノス戦(ホーム)で小野瀬選手が喜田選手のファールに対してキレたことに今ちゃんが加勢したシーンは、戦うチームへの変化を表すハイライト。守備面の整備といった戦術面もさることながら、追い込まれた状態で選手を変えたのは精神論だったのではないか。
来シーズンの注目ポイント
そんな宮本監督像が来シーズンどのように変化するかに注目している。賢い人なので、自らイメージを変える仕掛けをしてくる可能性もある。“孤高の天才”というイメージが強かったイチローがWBCを期に「気さくなリーダー」のイメージをブランディングしてきたように、来シーズンはマスコミも利用したマネジメントで、宮本監督が自身に必要だと感じているイメージが明らかになるかもしれない。だからジェソクよ、顔面パイ投げは慎重に行った方がいい。
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