【ACLアウェイ遠征記 / メルボルンビクトリー編】“消化試合”で見せた二川孝広選手の意地

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試合終了後、メルボルンまで駆け付けたガンバ大阪サポーターはある選手のチャントを歌った。その選手は試合に敗戦していたこともあり、笑顔は見せないながらも、観客席に向けて手を上げて応えた。この数秒のコミュニケーションで十分だった。言葉はいらない。なぜなら、我々の声援の先にいた選手は二川孝広だから。

ガンバの攻撃を長年牽引した二川選手

ガンバ大阪史上、最も無口で、最も天才であるフタ。チャントが歌われたことが示す通り、この試合で最も素晴らしいパフォーマンスを見せた選手の一人だった。試合前から既にACL敗退が決定しているモチベーション的に難しい“消化試合”で見せたベテラン選手の意地に心動かされた。

フタのボールタッチ数に比例して、リズムが良くなる試合展開を見ながら、敗戦濃厚の状況下でも声を枯らさずにはいられなかった。現状の立場を考えれば、この試合での活躍がチーム内の序列にどれほどの影響を与えるかは疑問だ。それでもベストを尽くすフタの姿に、私ができるのは声を枯らすことくらいだった。フタはどんな気持ちでプレーしていたのだろう。

メルボルン・レクタンギュラ―スタジアム

試合前、選手達が発した「消化試合は存在しない」という言葉。自分達に言い聞かせているものだと捉えていたが、試合を終えた今はそうは考えていない。確かに消化試合は存在しなかった。この日見たフタのプレーに対して、そんな言葉は使えない。フタと共に出場した若手選手達も同じ想いだったはずだ。この敗戦から学ぶものは多い。

ガンバ大阪U-23観戦のすゝめ -若手選手がJ3を経験する意味-

2016年4月22日

ACLアウェイ遠征の魅力

試合結果は残念なものになったが、今回のACLアウェイ遠征も充実したものになった。G.W.にグループリーグ敗退が決まっている試合を観戦するためだけにオーストラリアまで遠征するクレイジーなサポーターが集まるからこそ実現できるゴール裏の雰囲気や、異文化を感じるスタジアムを訪ねる興奮は国内遠征では得難い。中毒性が非常に高く、事実としてメルボルンに集まったガンバサポーターは知っている顔ばかりであった。

「顔は知っている」「SNSでは繋がっている」サポーターと、オフラインで交流がもてるのも少人数応援のACLアウェイ遠征ならではのミロク。年齢とともに疎遠になる友人もいるが、全国……いや、世界中で顔を合わせるサポーターコミュニティ―の重要性は今後、自身の人生において高まっていくのもしれない。

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1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。現在はスポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆。F1と競馬も好き