【ドルトムント遠征記】イタリアのガンバ大阪 -アタランタのサポーター軍団に出会って-

メディア寄稿実績

《原体験》

ヨーロッパ遠征を行った目的である。「私のアナザースカイは……ドルトムントです!」と元気良くカメラの前で宣言したい。数年後に“戻って来た”ドルトムントで「懐かしいな。当時は一人旅だったんです。今、こうして妻と子供と一緒にこの地で過ごせるのは感慨深いものがありますね。だって、私はその旅で今の生き方を決意したんですから。もはや私にとって第2の生誕地と言っても過言ではないですね」……とインタビューに応じたい。

ブレない価値観を持っている大人は原体験となる旅を経験しているように見える。私に足りないものだ。川淵キャプテンはデュッセルドルフ近郊の「デュースブルク・スポーツ・シューレ」を観たことがJリーグ立ち上げの原動力になってるし、中田英寿に至っては旅が人生になってしまったほど。旅は人生のモチベーション。ブラジルワールドカップでもインドネシアサッカーでもACLでも得られなかった経験をヨーロッパで積みたいと思っていた。

スタジアム

ヨーロッパリーグを観戦

サンティアゴ・ベルナベウは生きていた -マドリード遠征記-

2018年2月16日

突然の脇役 -アタランタ-

バルセロナマドリードと続けたヨーロッパ一人旅。最後の訪問地はドルトムント。「黄色い壁」に代表される圧倒的なサポーターの熱量。自分の大好きなサッカーが欧州でどれだけ価値があるものとされているのか。スタジアムで体感したかったのだ。

しかし、想定外の脇役が登場する。

スタジアムに向かう地下鉄の中で聞こえきたのは我がガンバ大阪と同じメロディーのチャント。「Forza(フォルツァ)○○〜♫」……イタリア語である。ドルトムントの対戦相手であるアタランタ(セリエA)のサポーター集団が大騒ぎしていたのだ。チャントだけではなく、服装や旗までガンバサポーターに似ている。青黒の血が騒ぐ。なんたる偶然。するとガンバサポーター仲間からツイッターにメッセージが届く。

「ガンバの応援はアタランタを基にしているから、ある意味ガンバの原点ですよー」

ドルトムントのサポーターを観に来たはずなのにアタランタに興味が湧く。気がつくと彼らばかり目で追っていた。

試合前から大騒ぎするアタランタサポーター

愛と狂気

ドルトムントサポーターは想像を裏切らない熱量だった。2万人で埋め尽くされたゴール裏の様子は圧巻だったし、真面目に歌い続けられるチャントなど律儀なスタイルにはドイツらしさも感じた。子供から大人までルールがあった上で、エンタテイメントとしてサッカーを楽しんでいるように見えた。

黄色い壁(ドルトムントサポーター)

一方でアタランタの応援には“狂気”を感じた。エンタテインメントに対する感情表現ではない。ゴールの瞬間には彼らの周りだけ感情爆発で時空が歪んで見えた。応援する彼らの様子は「アタランタこそ我が人生」とでも表現すべき熱量を感じた。

人生には狂う時間が必要だ。その時間が自分をまともにする。試合後、負けたにも関わらず充実した表情をしているアタランタサポーターを見て学んだことだ。なぜガンバ大阪サポーターはカオスとも言えるアタランタを応援のモデルにしたのだろう。今後調べてみよう。イタリアにも行ってみよう。

原体験を探す旅は続く。

ジグナル・イドゥナ・パルク

日常と非日常が混ざり合うスタジアムで -バルセロナ遠征記-

2018年2月12日
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大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。スポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営を経て新聞社へ。社会学、映画、読書、F1、競馬、スポーツビジネス、ラーメンが好き。