クルピ監督が頻繁に発言する「年齢は関係ない」は、長谷川健太前監督における「攻撃的なサッカーをしたい」と同じだと思っている。
つまり、建前。
クルピ監督はパブリックイメージ通り、若手選手の成長を見るのが大好きなように見える。
今節、途中交代を悔しがるファン・ウィジョ選手や泉澤仁選手に対して、握手ひとつしないクールな一面を見せたお爺ちゃんは、その20分後、中村敬斗選手のゴールをスタッフと抱き合って喜んでいた。
ただ、若手選手が好きなのはサポーターも同じである。
中村敬斗選手の得点直後、ゴール裏は「とんでもない瞬間を目撃してしまった!」という興奮と幸福感で溢れた。開幕前は、多くのサポーターから中村“君”と呼ばれていた高校3年生も、今では「敬斗」が定着。お客さんではなく、完全な戦力と見なされるまでに成長した。凄い選手がガンバに加入した。
コメントから読み解く中村敬斗
プレーもさることながら、個人的には彼の「コメント力」に注目している。大黒将志選手の「そうっすね」、井手口陽介選手の「なんていうんやろ」を観てきたガンバサポーター的には、17歳であそこまでしっかり自分の言葉で話せることに驚きを隠せない。
「シュートを打とうか迷ったんですけど、当たったら嫌だなと思って切り返しました。でも、その時に足を滑らしてしまって、次のプレーに身体が付いてこなかった。今思えば振り抜いておくべきだったかなとは思います。CKになるかもしれなかったし」(川崎戦後のコメント)
「ファーに打ってもいいかなと思ったけど、どっちも空いていた。少しファーのほうからディフェンスの昌子さんが来ていたので、足に当たったら嫌だなと思ったので、ニアを狙った」(鹿島戦後のコメント)
感覚的にプレーする選手は多いが、敬斗選手は違うようだ。コメントにメディア(書き手)の編集が入っている可能性を考慮しても、ここまで論理的に話せる若手選手はなかなかいない。考えてプレーしている証拠でもあるし、攻撃のパターン練習を嫌うクルピ監督と相性がいい理由も分かる気がする。自分に自信を持っている点も、プロ向きのメンタリティで頼もしい。
「フィジカルやスピードで負けていることはないと思う。あとは状況判断。それができれば、点が取れてくるかな」(ルヴァンカップ広島戦前のコメント)
「このあたりでゴールを決めないといけないな、と思っていた」(ルヴァンカップ浦和戦後のコメント)
アイデンティティを確立するためには、他者からの“承認”が必要だと言われている。自分が何者なのか……10代はその答えを探し、迷走しがちである。
しかし、敬斗選手は自分を客観視し、その上で自信を持てているのは、育ってきた環境も良かったのだろう。「個人の持ち味を尊重(個々の可能性を最大限に伸ばす)」「自らが考えるサッカーの浸透」を指導の基軸に置く(敬斗選手の出身クラブである)三菱養和による指導の影響もあるのかもしれない。
そして、プロ入り後は、我々サポーターが彼の成長を後押しする。好プレーには賞賛の声を送り、ピッチで積極的なプレーができるように応援を続ける。勿論、たとえそれがガンバから旅立つ日を早めることになったとしても。
中村敬斗選手、プロ初ゴールおめでとう。
Photos:おとがみ
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