空席の目立つスタジアムで考えたこと -スズキカップ観戦記 タイ編-

メディア寄稿実績

ソフトバンクから届いたメールの文面に目を疑う。

「海外パケット通信料が1万円を超えました」

海外旅行の終盤で、データローミングの設定ミスが発覚。1泊3,000円のホテルに泊まっている意味を失った瞬間だった。今回のアジア遠征は、観戦予定試合のチケット完売に始まり、部屋の冷房故障、スタジアムへ向かう往路での迷子、クレジットカード使用不可によるホテルチェックイン拒否、激痛の意思が伝わらないマッサージ、一人旅なのに3人前からしか注文できないプーパッポンカレー、駅に行きたいのに「ステーション」という名前の会社前に連れていくタクシー、定期的に起きるゲリラ豪雨……トラブル祭りだった。そんなトラブルを楽しめる若さは私にはない。

そんな激動の数日間を思い返しながら、この文章を書いている。日本への帰国便を待つ、空港のトランジットエリアでひとり。

「サヴォイ」(ラジャマンガラ・スタジアム)

2018年12月24日

ベトナムほどの熱狂はなかったけれど

ラジャマンガラ・スタジアム

ハノイの熱狂から8時間後、バンコクに飛んだ。目的はもちろんスズキカップ観戦だ。

愛国心を叫べ!混沌としたスタジアムで -スズキカップ観戦記 ベトナム編-

2018年11月17日

空港に降りた瞬間に分かる、ベトナム(ハノイ)とは違う街の国際感。中心部まで電車で移動できる交通インフラ。桁の小さい通貨。街に溢れる広告の数は経済力の証拠。タイのクラブに移籍する日本人が増えている理由も理解できる。

社会的な成熟は、サッカー界においても同様だった。満席にならない観客数や、試合中に派手な感情表現をしないサポーターの姿。冷めているのではなく、落ち着いていると表現した方が適切なのだろう。ベトナムとは違い、タイ人にとって、サッカーは“ワンオブゼム”なのかもしれない。スズキカップ2連覇中の東南アジアの雄だ。グループリーグくらいでは騒がない。

外国人(日本人)的には、タイの立ち位置は中途半端な気もする。スズキカップ最大のコンテンツ価値は、東南アジア独特の「サポーターの熱量」だと考えているから。それを感じることができないのは、残念だった。

ただ、一緒に観戦した現地在住の日本人サポーター「きーきあっ」さんから、試合後の飲み会(ご馳走してもらった!!)で、タイのサッカーファンは選手達がJリーグなど海外で活躍することを喜んでいることや、チャントやゲーフラなどのサポーターカルチャーも多様性が出始めているという話を聞いて、短絡的に“タイサッカー”を評価したことを反省もした。ホテルに戻ってたから付けたTVでは長時間サッカーの話題が放送されていた。

サッカー観戦が繋ぐ縁

念願だったスズキカップ観戦を終え、海外サッカーの熱源を探す旅は一区切り。今年はスペインドイツカンボジアに続き、スズキカップ(ベトナム・タイ)と5ヶ国も回れ、本当に充実した時間を過ごせた。

目の前で応援していた少し癖があるサポーター

最後にお礼を記したい。今年の海外サッカー遠征では、多く方にサポートいただいた。観戦チケットの手配、宿泊地の提供、原稿執筆依頼……サッカーがもたらしてくれる縁に感謝。感謝のお礼は、この先のサッカーライフで出会うであろう若きサッカーファンに返そうと思っている。そうしたサポートの積み重ねがサッカー文化を未来に繋ぐことになると信じて。

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ABOUTこの記事をかいた人

1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。現在はスポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆。F1と競馬も好き