矛盾する価値 -スズキカップ観戦記 タイ編-

ソフトバンクから届いた「海外パケット通信料が1万円を超えました」というメールタイトルに目を疑った。金欠による貧乏旅行で1泊3,000円のホテルに泊まっているというのに……。

今回の旅を思い返すと、観戦チケット完売に始まり、部屋のエアコン故障(夏)、異国の夜に迷子、クレジットカードが使えないことによるホテルチェックイン拒否、激痛の意思が伝わらないマッサージ、一人旅で3人前からしか注文できないプーパッポンカレー屋訪問、郊外の「ステーション」という会社に連れていくタクシー、定期的に起きるゲリラ豪雨、そしてパケット通信料……トラブルしかなかった。我ながらよくやりきった。

トラブルの度に「なぜここに来たのか」と自問自答を繰り返し、「きっと今後の人生で役に立つ」と信じる。その繰り返し。前向きに前向きに……そんなことを想いながら、帰国便を待つ深夜の国際空港に一人。小さくて固いトランスファーベッドに寝そべりながらこの記事を書いている。

「サヴォイ」(ラジャマンガラ・スタジアム)

ベトナムとの比較で考える。タイのサッカー熱

ラジャマンガラ・スタジアム

ハノイの熱狂から8時間後、タイ・バンコクに飛んだ。目的はここでもスズキカップ観戦。

愛国心と -スズキカップ観戦記 ベトナム編-

人生で2回目のタイ訪問である。空港に降りた瞬間に分かる、ベトナム(ハノイ)とは違う国際感。街の中心部まで電車で移動できる交通インフラ。桁の小さい通貨。街に溢れる広告の数は経済力の証拠だ。タイのクラブに移籍する日本人が増えている理由が分かる。

社会的な成熟はサッカー界においても同様だった。満席にならない観客数や、試合中に派手な感情表現をしないサポーターの姿。冷めているのではなく、落ち着いている。ベトナムとは違う“ワンオブゼム”としてのサッカー。スズキカップ2連覇中の東南アジアの雄にとって、グループリーグの一戦はそれくらいのものなのだろう。

ただ、外国人(日本人)的にはタイの立ち位置は中途半端でもある。スズキカップ最大のコンテンツ価値は、東南アジア独特のサポーターの熱量だと考えている。正直、それがない試合は物足りなかった。オンザピッチのレベルは上がり、サポーターのサッカーを見る目も成熟していることを良しと思わないのは、私のエゴではあるのだが……。何かを得れば、何かを失うのは世の中のルール。立場が変わればサッカーの見方も変わる。

タイではSNSを通じて知り合ったきーきあっさん(現地在住)と合流し、現地情報を聞きせていただきながら試合を観戦した。お聞きした話の詳細はここでは割愛するが、感じたのはサポーター文化の多様性。日本には日本の、タイにはタイの応援文化があるということ。「熱量」「一体感」といった視点でしか評価していなかった自身の思考の偏りを反省した。同時に多様な視点を持ち続けるためにも異国遠征など、定期的に新しい刺激を受ける必要性も痛感した。こういう考え方をできるようになれたことは、海外パケット代数万円以上の価値があるはず(と、自分に言い聞かせている)。

サッカーがつなぐ世界との縁

念願だったスズキカップ観戦を終えて海外サッカーの熱源を探す旅は一区切り。今年はスペインドイツカンボジアに続き、スズキカップ(ベトナム・タイ)と5ヶ国も回れ、本当に充実した時間を過ごしている。

どのスタジアムにもいる癖のあるサポーター

最後にお礼を記したい。今年の海外サッカー遠征では多く先輩方からサポートをいただいた。チケットの手配、宿泊地の提供、原稿執筆依頼、ご馳走いただいた現地グルメ……。サッカーがもたらしてくれる縁に感謝。感謝のお礼はこの先の人生で出会うであろう若きサッカーファンに返そうと思っている。そうしたサポートの積み重ねがサッカー文化を未来に繋ぐことになると信じて。

サポーターをやめるとき

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ABOUTこの記事をかいた人

駄文系サポーターブログ管理人。“サポーター目線”をコンセプトにJリーグやガンバ大阪に関する雑記、全国のラーメン食レポなどを執筆。10年間の衛星放送会社勤務を経て、サッカーメディア編集者に転職。筑波大学大学院でスポーツ社会学を研究(修士号取得)。趣味は炭水化物抜きダイエット。好きな食べ物はカレーライスとラーメン。ツイッターID:@7additionaltime