【インドネシアサッカー観戦記】カオスがもたらす熱狂のスタジアム

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インドネシアの国内サッカーリーグ「ISL(Indonesia Super League)」を観戦しました。ISLを「アジアで一番熱狂的なリーグ」と評する人は多く、機会があれば一度行ってみたいと思っていたんです。最近は「インドネシアでJリーグを放送」や「Jリーグ初のインドネシア人選手・イルファンの甲府加入」といったニュースが報じられ、サッカーに関しては、日本とインドネシアの距離が縮まっていたことも今回の遠征動機の1つでした。

また、インドネシアに興味をもたせてくれたもう1つのきっかけは「ガンバ大阪のアジア戦略」です。インドネシアでガンバ大阪の親善試合開催やTV番組の放送開始が決定。そんな背景もあり、インドネシアのサッカーを詳しく知りたいという想いが高まり、Jリーグのオフシーズンを利用して3泊4日で旅に出ました。成田~ジャカルタ(インドネシア)は片道7時間半。ANA直行航空券は往復8万円です。

今回観戦した試合はジャカルタから車で4時間程度のバンドゥン(Bandung)という町をホームタウンにするクラブ「プルシブ(PERSIB)」のホームゲーム。当初はインドネシアで一番熱狂的なサポーターを持つとされる「アレマ・インドネシア(AREMA INDONESIA)」(ヤットにオファーを出したと報じられたクラブ)の試合を観に行く予定だったのですが、アレマのホームタウンであるスラバヤ付近の火山が噴火した影響で急遽試合中止になってしまったのです。

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2018年11月17日

カオスこそインドネシアサッカー最大の魅力

プルシブのホームスタジアム

プルシブもインドネシアサッカー初心者の私からすれば、十分すぎるほど熱狂的でした。これ以上の熱狂はもはや“暴動”だと感じるほどです。サッカーに対する熱量が異常。初めて埼スタに行った時やアルウィンでアルプス一万尺を聞いた時以上の衝撃を受けました。ゴール裏のサポーターが応援を始めてからしばらくは鳥肌が止まりませんでした。

声量のあるチャント、ダイナミックな応援(体)の動き、同じタイミングで立ち上がり声援を送ることで生まれるスタジアムの一体感……それらの光景からインドネシア人にとって、サッカーがどれだけ大切なものか一瞬で理解できました。異国でサッカーを愛する気持ちや興奮を共有できる経験はとても新鮮なものでした。

プルシブサポーターの応援風景

万人に推奨できるコンテンツではないことも確かです。スタジアムでの暴動は頻繁に起きているようで、時には死者が出てしまうケースも……。今回の旅でお世話になった先輩(インドネシア在住)も、単身でスタジアムへ行く危険性を何度も忠告されましたし、当初スタジアムまで送迎してくれる予定だったドライバーには「スタジアムで車を壊されたら嫌だから」とドタキャンをされてしまうほど。

私が観戦した試合では暴動は起きなかったものの、試合中には信じられない数のペットボトルがピッチに向けて投げられ(選手が拾ってピッチ外に出していた)、試合中ずっと中指立てて(多分)汚い言葉を叫び続けている人はそこらじゅうにいました。もちろん、発煙筒も焚かれています。そうした問題行動を起こしている人がマイノリティではないのがインドネシア。この試合がJリーグ管轄であれば、数千名単位で出禁処分を受ける人がいるでしょう。

ただ、そのカオスはISLの魅力を下げるものではありません。そうしたスタジアムの治安の悪さも、むしろ魅力として捉えられているのではないか……びっしりと観客で埋まったスタジアムの風景を見てそう感じました。大量に配備された警備員の数も、飛び交う罵声やペットボトルも、ISLの様式美。大相撲で座布団が投げられるようなものなのかもしれません。

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2018年9月27日

「Jリーグの方が上」という目線は危険です。各国独自の魅力は必ず存在します。今後、ガンバをはじめ、各クラブがアジア戦略として東南アジア各国との提携を強めていく中で、逆に教えてもらうことも多いのだろうなと感じる、今回の旅でした。

 

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1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。現在はスポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆。F1と競馬も好き