「主審告白」(家本政明)




Jリーグの主審で一番知名度があると言っていい家本主審だが、その知名度は決してポジティブな形で高まった訳ではない。彼の名を多くのJリーグサポーターが強く認識したのは2008年のゼロックススーパーカップだろう。退場3名、警告11名を出す大荒れの試合を担当した家本主審はその責任を問う形で多くの批判に晒された。いや、批判というよりも誹謗・中傷といった方が正確だったかもしれない。

それから8年。家本主審へのまなざしは現在もさほど変わっていない。一度貼られたレッテルははがれず、数いる主審の中でも安定したジャッジを見せているようにも思えるが、スタジアムで家本氏の名が紹介されると未だに大きなブーイングが起きている。

そうした世界で生きている彼が何を考え、どのような行動をしているのか知るために読み直した2010年発売の一冊。

書籍概要

書籍名:主審告白

筆者:家本政明

発行:東邦出版

価格:1,500円(税別)※amazonで中古15円で発売

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理論、哲学、信念……それで自身を守ったのではないか

本書は「主審・家本政明」が何をもって形成されていったのかを自身が振り返る構成となっている。その中で一番批判を受けていた時期に考えていたことや、サポーターからは見えないピッチ上のリアル(選手から肘打ちされた事件など)は読みどころの一つ。普段は主審からの情報発信がない故に一方的な視点で解釈せざるをえなかった主審という存在を多角的に捉えるヒントを与えてくれる。結局、家本氏の場合は「(彼のことを)知らない、理解しない」ということが批判が続く一因なので、まずは偏見をなくす意味で一読の価値がある。現在のレッテルに関して本人の責任がないとは思わないが、ある種犠牲者の側面もあったことを知ることができる。

そして、一冊を通じて感じたのは家本氏はかなりの理論化であり、哲学者でもあるということ。本の中でも多くの出会いが描かれているが、ヨガやバレエといった他スポーツに加え、歌舞伎や演劇などからも学んでいることが紹介されている。岡田武史氏が初めて日本代表監督に就任した時に自身への懐疑の目を払拭するためには理論武装で固めるしかなかった旨のコメントを聞いたことがあるが、それと似たような感情が家本氏にもあったのではないか。ヨーロッパと比較して日本の主審はリスペクトもされていないし、守られてもいない現状への言及があるが、彼等(主審)の孤独は想像を絶する。試合中に選手とのコミュニケーションをかなり取る独特の試合コントロール方法をはじめ、自身も認めている通りアウトローな部類に入る主審ではあるが、そこに至る過程や理由を知ることは今後のJリーグ発展のためにも必要な視点である。

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ABOUTこの記事をかいた人

1日中サッカーのことばかり考えているダメ社会人。ガンバ大阪サポーター。東京在住の30代男性。10年間の衛星放送会社勤務を経て、スポーツを勉強するために大学院に入学。炭水化物抜きダイエットを実施中。好きな食べ物はカレーライスとラーメン。