「アナリティックマインド」(森本美行)

メディア寄稿実績

スポーツ界だけに留まらず、あらゆる業界で技術革新が進み、取得できるデータ(情報)が加速度的に増えている昨今。そんなデータの活用法や捉え方など、現代を生きる上で必須の心得と言っても過言でない“アナリティックマインド”について書かれた一冊。

著者は元データスタジアム社長の森本美行さん。ありがたいことにお話を聞く機会を頂き、執筆動機やご経験から考えるデータとの向き合い方についてはインタビュー記事としてまとめた。今回の記事では、そのインタビュー記事とは少し違う視点で考えたことを綴る。

書籍概要

書籍名:アナリティックマインド

著者:森本美行

発行:東洋館出版社

価格:1,700円(税別)

詳細はこちら

アナリティックマインドを身に付ける前提としての“歴史”

この本は第1章を「スポーツが歩んできた道」と題し、近代スポーツ誕生以降の歴史を振り返ることから始められている。帯にも記載がある「最新のテクノロジーとデータ分析」が本書の趣旨ではあるが、「そもそもスポーツって何?」という前提(歴史)を把握することは、あらゆるスポーツに関する事象を考察する上で役に立つ。

例えば「dis(~ではない)port(港)」が語源とされるスポーツは、元々「遊び」「暇つぶし」「気晴らし」という意味合いが強いコンテンツだった。そんなスポーツにデータが持ち込まれた背景の1つが“スポーツの商業化”。新型コロナウイルスの影響で、各Jリーグクラブが経営的に大きなダメージを受けたことにより、スポーツのビジネス面を意識する人も増えたはずだ。

スポーツの商業化で得たものは言わずもがな。一方で、失ったものもあることを感じる機会も……。「試合を楽しみます」と発言した選手が「意識が低い」と批判され、1つのミスジャッジに人格否定のような野次を飛ばされる審判。スポーツは「遊び」ではなくなった。

「しくじり審判」(小幡真一郎)

2021年10月22日

サポーターへの目線の厳しさも然り。スタジアムは“許容される世界”ではなくなりつつある。スポーツの経済価値の高まりに比例するように、強く求められる社会常識。スポーツが「disport」である時代の終わりは目の前まできている。

『アナリティックマインド』のあとがきには、広瀬一郎氏の言葉として「スポーツをその歴史、その当時の社会情勢から考察し、現状を理解する」ことの重要性が紹介されてある。私がこの本を読んで最も感じたのは、あらゆる事象のデータが取得できるようになっているからこそ、そのデータに振り回されず、自らの頭で考察できる能力……つまり、それこそが「アナリティックマインド」であるということだ。

Digiprove sealCopyright protected by Digiprove
人気記事紹介

ABOUTこの記事をかいた人

1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。現在はスポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆。F1と競馬も好き