「アナリティックマインド」(森本美行)

スポーツ界だけに留まらず、あらゆる業界で技術革新が進み、取得できるデータ(情報)が加速度的に増えている昨今。そんなデータの活用法や捉え方など、現代を生きる上で必須の心得と言っても過言でない“アナリティックマインド”について書かれた一冊。

著者は元データスタジアム社長の森本美行さん。ありがたいことに先日お話を聞く機会を頂き、執筆動機やご経験から考えるデータとの向き合い方についてはインタビュー記事としてまとめた。今回の記事ではそのインタビュー記事とは少し違う視点で本書を読んで考えたことを。

書籍概要

書籍名:アナリティックマインド

著者:森本美行

発行:東洋館出版社

価格:1,700円(税別)

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アナリティックマインドを身に付ける前提としての“歴史”

この本は第1章を「スポーツが歩んできた道」と題し、近代スポーツ誕生以降の歴史を振り返ることから始まる。帯にも記載がある「最新のテクノロジーとデータ分析」が本書の趣旨ではあるが、“そもそもスポーツって何?”という前提(歴史)を把握することはあらゆるスポーツに関する事象を考察する上で役に立つ。

例えば「dis(~ではない)port(港)」が語源とされるスポーツは元々「遊び」「暇つぶし」「気晴らし」という意味合いが強いコンテンツだった。そんなスポーツにデータが持ち込まれた背景の1つとしてある“スポーツの商業化”。暇つぶしであったはずのスポーツに効率化を求めてデータが使われるようになったという歴史(経緯)自体が既に興味深いが、スポーツがビジネスであるということを特にサッカーファンはコロナ禍で意識せざるをえない機会が多かったはずである。

スポーツの商業化で得たものは言わずもがな。一方で最近は失ったものもあることを感じる機会も……。「試合を楽しみます」と発言した選手が「意識が低い」と批判され、1つのミスジャッジに人格否定のような野次を飛ばされる審判。スポーツは遊びではなくなったのか。

【編集後記】レジェンドレフリー・小幡真一郎さんの記事を寄稿して

それはサポーターへの目線の厳しさでも然りで、最近話題になった「アビスパ福岡」の件はその典型。関係者のリアクションは賛否両論であるが、スタジアムが“許容される世界”ではなくなりつつある大きな流れは感じる。スポーツの経済価値の高まりに比例するかのように強く求められる社会常識。スポーツが「disport」である時代の終わりは目の前まできている。

上記は視点の1つに過ぎないが、こうして歴史に触れることでスポーツを考察する幅が広がるのは間違いない。商業化の歴史を知れば、アマチュアリズムについても勉強したくなり、色んな視点を持てるようになる。

『アナリティックマインド』のあとがきに広瀬一郎氏の言葉として「スポーツをその歴史、その当時の社会情勢から考察し、現状を理解する」ことについて記載がある。あらゆる事象のデータが取得できるようになっているからこそ、そのデータに振り回されず、自らの頭で考察できる能力……“アナリティックマインド”が必要なのだろう。

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ABOUTこの記事をかいた人

駄文系サポーターブログ管理人。“サポーター目線”がコンセプト。Jリーグやガンバ大阪に関する雑記、ラーメンを中心とした全国のグルメ紹介記事などを執筆。10年間の衛星放送会社勤務を経て、サッカーメディア編集者に転身。筑波大学大学院でスポーツ社会学を研究(修士号取得)。趣味は炭水化物抜きダイエット。好きな食べ物はカレーライスとラーメン。ツイッターID:@7additionaltime