今シーズン、ガンバ大阪は積極的な戦力補強を敢行した。
怪我人で苦労した昨シーズンを考えれば、納得感のある編成である。多くのメディアで報じられた「東口・谷 レギュラー争い」を筆頭に、各ポジションで主力級の選手達が鎬を削っている。プロサッカー界の常ではあるが、選手達は例年以上に厳しい競争にさらされることになった。
そんなガンバ大阪を率いるポヤトス監督のマネジメントで重視されているのが「ファミリー」感であるという。“強い仲間意識”や“団結”といった趣旨のキーワードだと理解している。チーム内の競争が激しくなるからこそ大切になるコンセプトだ。
超アマチュアサッカー選手だった私の経験的には、自分が出場していない試合においてチームを100%ピュアな気持ちで応援できた記憶がない。チームが勝つことで、自分の立場(序列)を悪くするリスクがあるから。
「利己的なお前とJリーガーを一緒にするな!」という批判は甘んじて受け入れるものの、個人事業主でもあるJリーガーも自身の記録を度外視して、チームへの献身を続けるのは精神的に難しいはずだ。
日本ではサッカーW杯の度に出場機会を失ったベテランや、旧エースの犠牲が美徳として報じられる。悔しい気持ちを抑えて出場している選手に水を渡し、ベンチからアドバイスを叫び、練習では明るく振る舞う。サポート役に徹することでチームのムードを高める。そして、帰国後に告白する。「あの時間は地獄だった……」と。
短期間の国際大会でもギリギリの献身を、クラブチームで長期間求めるのは酷だ。第1節・柏レイソル戦、第2節・サガン鳥栖戦ともに、試合後には出場機会のなかった選手がチームメイトを慰労する様子が見られた。この光景がシーズン終了まで続いて欲しいが、簡単ではないだろう。
今後を見据えたマネジメント
「東口は本当にすばらしいGKで、僕自身、彼に惚れきっている」(スポーツ報知)
開幕戦後に発せられたポヤトス監督のコメントである。出場機会を減らした選手をどのようにモチベートするかは、“ファミリー”として戦う上で重要なファクターで、その点で既述の発言は意味あるものだった。
東口選手も自身へのリスペクトを感じるだろうし、GKのレギュラー争いが継続することを示唆することで、競争による成長も期待できる。開幕前に話題になった「柳澤選手のアンカー起用」も近しいものだと捉えている。
第2節終了時点で新加入選手数名がスタメン出場を経験しつつ、昨シーズン後半に出場機会を失っていた山見選手や武蔵選手もプレー時間を確保しているなど、全体的にはバランスの良い選手起用だと感じる。
ただ、全員が納得するマネジメントが存在しないことも確かで、少しずつ“ノーチャンス”な選手も明らかになってくる。Jリーグクラブは終身雇用が保証されているようなタテ型組織ではないため、出番がない選手は他クラブに居場所を求めることが予想される。監督の仕事が難しくなるのはここから。
現時点では充実の編成であるように見えるが、主力選手の欧州移籍や怪我などで、シーズン後半には総力戦となっている可能性は低くないと見る。ネタラヴィ選手を筆頭に例年以上に「個」に注目が集まるシーズン序盤になっているからこそ、来月から開幕するルヴァンカップも上手く活用しつつ、なるべく多くの選手が戦力化されるチームになることを期待したい。
Photo:おとがみ