2023年3月に開業された新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」に行ってきた。
同球場の建設地決定までの経緯が紹介された書籍「アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち」を複数回読んで、ファイターズが目指す球場と地域の新しい関係性に感銘を受けていた身としては、聖地巡礼に近い気持ちで北広島駅に降り立った。
結論を先に書くと……すごかった。
カンプノウ(スペイン)やマラカナン(ブラジル)を初めて訪問した時よりも感動したかもしれない。「すごい!すごい!」を連発しながら、スマホで球場内のあらゆる施設の撮影を続ける私の隣でサポーター仲間が言う。
「本当に感動したものに出会った時は『すごい』としか言葉が出てこないですよね」
その通りだと思う。便宜上「球場」という言葉を使っているが、エスコンフィールドHOKKAIDOは明らかに「球場」や「スタジアム」といった既存の施設の枠から飛び出した建築物であり、それゆえに上手く魅力を表現する言葉を見つけることが出来なかったのだ。
ただ、今回は幸運なことに、ファイターズの社員さんアテンドによるプライベートスタジアムツアーを実施いただく機会に恵まれた。自分の語彙力不足は、他人(当人)にフォローしてもらおう。
本記事では、スタジアムツアーで解説いただいた中から、興味深かったものを一部紹介する。エスコンフィールドHOKKAIDOでお世話になった、すべての関係者の皆様にお礼申し上げます。

エスコンフィールドHOKKAIDO 外観
贅沢な観戦体験ができる「ラウンジ」
最初に案内してもらったのは「ラウンジ」。
特別なサービスを提供する優雅な空間で、主に富裕者層の利用が想定されている。スタジアム(試合興行)の売上として、VIPを対象としたものが結構な比率を占めているのはよく聞く話。同エリアの『年間シート』は100万円以上の販売価格らしく、約5万円のパナソニックスタジアム年間パスの更新を毎年「え~どうしようかな。行けなかったらもったいないかな~」と迷う貧乏な私には縁がないエリアだ。

グラウンドが目の前の座席(パナソニッククラブラウンジ)
1試合を通じてラウンジに滞在した訳ではないが、値段に見合った観戦体験ができる場所だと感じた。食事や飲み物をはじめ、提供されるサービスがオールインクルーシブである点も素晴らしい。もし私がファイターズのファンで、1年間で約70試合(日)をここで過ごすことができたなら、なんて幸せな人生なのだろうと想像した。きっと超庶民な私でも年間100万円払うだろう。
また、年間シートは1試合単位でリセールが可能で、売値を定価以上に設定できるとのこと。それによりチケットの市場価値をチームは把握しているのだそう。私が保有しているガンバ大阪の年間シートのリセールは、約半額が販売価格の上限として設定されているので、羨ましい制度だ。
「エスコンフィールドHOKKAIDO」とは何なのか?
ホテル、サウナ、醸造所、飲食店、グッズショップ……球場内の見所を案内してもらえれば、してもらうほど「エスコンフィールドHOKKAIDOとは一体何なのか」という感覚に陥った。約1時間のツアーを終えてもなお、私は「す、すごいっすね……」としか言えなかった。
試合が始まった後も、野球以外のコンテンツの多様性に驚かされた。イニング間は必ずイベントが開催され、観客を盛り上げる。選手のプライベートに関するインタビュー映像が流れたかと思えば、次のタイミングではファンの飼っている犬が特技を披露した。各イベントにはスポンサーも付いているので一石二鳥。特にファイターズガールによる「きつねダンス」の時間は、野球以上に盛り上がっているようにも感じた。
コンテンツの多様性がそうさせるのか、Jリーグのスタジアムと比較すると“自由な雰囲気”も印象に残っている。試合中にも関わらずコンコースには大量のファンが行き来し、応援のスタイルや熱量も人それぞれであることが許容されている。
エスコンフィールドHOKKAIDOは、ある人にとっては“居酒屋”だし、ある人にとっては“アイドルライブ会場”なのだ。プロスポーツが競技面と事業面の両輪で成り立っていることを再確認させられる場所だった。
先の『アンビシャス』内では、エスコンフィールドHOKKAIDO建設のコンセプトとして《スポーツキャピタル》という言葉が使われている。ガンバ大阪が目標として掲げる《日本を代表するスポーツエクスペリエンスブランド》にも通じると思うが、抽象性が高く、理解しにくい部分があるビジョンの具体の一端を見た気がする。
正直に言って、試合内容はほとんど覚えていない。だけど、エスコンフィールドHOKKAIDOで過ごした数時間はすごく楽しかった。多分、ファイターズはこのスタンスを認めてくれる気がする。
