【プロ野球観戦記】Jリーグサポーターが感じた「エスコンフィールドHOKKAIDO」の魅力

メディア寄稿実績

今回は2023年3月に開業された新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」を訪問した話を。

同球場の建設地決定までの経緯がエモーショナルに紹介されている書籍「アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち」を通じて知ったのは、ファイターズが目指す「球場と地域の新しい関係性」について。その実現が核となるのが「エスコンフィールドHOKKAIDO」であり、多くの日本プロスポーツの在り方が変わる契機になりえるポテンシャルを秘めた施設だと認識している。

既述書籍の大ファンである身としては、聖地巡礼のような気持ちで北広島駅へ向かった。

「アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち」(鈴木忠平)

2023年5月1日

結論を先に書くと……「すごかった」としか言いようがない。歴史あるカンプノウ(スペイン)マラカナン(ブラジル)を初めて訪問した時よりも感動したかもしれない。「すごい!すごい!」を連発しながら、球場内のあらゆる施設の撮影を続ける私を見た友人が言う。

「本当に感動したものに出会った時は『すごい』としか言葉が出てこないですよね」

その通りだと思う。本当に美味しいものを食べた時は「美味い」しか言えなくなる時の感覚に近い。余計な説明はいらない。「とにかく行って(食べて)みろ」。

便宜上「球場」という言葉を使っているが、エスコンフィールドHOKKAIDOは明らかに「球場」や「スタジアム」といった既存の施設の枠から飛び出した建築物であり、ゆえに上手く魅力を表現する言葉を見つけることができない。

ただ、今回は幸運なことに、ファイターズの社員さんアテンドによるプライベートスタジアムツアーを実施いただく機会に恵まれた。自分の語彙力不足は、他人(当人)にフォローしてもらおう。

本記事ではスタジアムツアーで解説いただいた中から、興味深かったものを一部紹介する。エスコンフィールドHOKKAIDOでお世話になった全ての関係者にお礼申し上げます。

エスコンフィールドHOKKAIDO 外観

贅沢な観戦体験ができる「ラウンジ」

最初に案内してもらったのは「ラウンジ」。

特別なサービスを提供する優雅な空間で、主に富裕者層の利用が想定されている。試合興行の売上として、VIPを対象とした施策が高い比率を占めているのは、スポーツビジネスの世界においては常識。本エリアの『年間シート』は100万円以上の販売価格らしく、約5万円のパナソニックスタジアム年間パスの更新を毎年「え~どうしようかな。行けなかったらもったいないかな~」と迷う貧乏な私には縁がないエリアだ。

グラウンドが目の前の座席(パナソニッククラブラウンジ)

1試合を通じてラウンジに滞在した訳ではないが、値段に見合った観戦体験ができる場所だと感じた。食事や飲み物をはじめ、提供されるサービスがオールインクルーシブである点も素晴らしい。もし私がファイターズのファンであれば、1年間で約70試合(日)をここで過ごす生活はとても幸せだろうと想像した。庶民である私でも年間シートを購入するに違いない。

また、年間シートは1試合単位でリセールが可能で、売値を定価以上に設定できる設計になっている。球団はリセール価格をチェックすることで試合の市場価値を把握しているのだそう。年間シートの金額を考えれば投資的な側面もあり、購入者にとってのメリットも考えられていることにも感銘を受けた。

「エスコンフィールドHOKKAIDO」とは何なのか?

ホテル、サウナ、醸造所、飲食店、グッズショップ……球場内の見所案内が進むほどに「エスコンフィールドHOKKAIDOとは一体何なのか」と混乱した。約1時間のツアーを終えてもなお、私は「す、すごいっすね……」としか言えなかった。

試合が始まった後も、野球以外のコンテンツの多様性に驚かされた。イニング間は必ずイベントが開催され、観客を盛り上げる。選手のプライベートに関するインタビュー映像が流れたかと思えば、次のタイミングではファンの飼っている犬が特技を披露した。各イベントにはスポンサーも付いているので一石二鳥。特にファイターズガールによる「きつねダンス」の時間は、野球以上に盛り上がっているようにも見えた。

コンテンツの多様性がそうさせるのか、Jリーグのスタジアムと比較すると“自由な雰囲気”も印象に残っている。試合中にも関わらずコンコースには大量のファンが行き来し、応援のスタイルや熱量も人それぞれであることが許容されている。

エスコンフィールドHOKKAIDOは、ある人にとっては“居酒屋”だし、ある人にとっては“アイドルライブ会場”なのだ。プロスポーツが競技面と事業面の両輪で成り立っていることを再確認させられる空間だった。

『アンビシャス』内では、エスコンフィールドHOKKAIDO建設のコンセプトとして《スポーツキャピタル》という言葉が使われている。ガンバ大阪が目標として掲げる《日本を代表するスポーツエクスペリエンスブランド》にも通じる思想。抽象性の高さから理解しにくい部分があるのも事実だが、現地でその具体の一端を見た気がする。

正直に言って、試合内容はほとんど覚えていない。しかし、エスコンフィールドHOKKAIDOで過ごした数時間はすごく楽しかった。それでいい。ファイターズはこのスタンスを認めてくれると確信している。

Jリーグとの比較から考える「ブースター」の応援スタイル -Bリーグ初観戦記-

2018年4月13日

観戦歴1年で考えるF1の魅力 -サッカーファンの日本グランプリ観戦記-

2023年10月6日
Digiprove sealCopyright protected by Digiprove
人気記事紹介

ABOUTこの記事をかいた人

1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。現在はスポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆。F1と競馬も好き