「超攻撃時代」と「超守備時代」の両方を経験して -日本平でのサッカーからガンバの未来を考える-

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清水エスパルス戦を見ている途中、「社会のあらゆるものは行ったり来たりするんですよ」という大学院の指導教授の言葉を思い出した。4-2という結果、試合終了間際の失点に「ガンバらしいな……」と懐かしさを覚えたサポーターもいたはずだ。“大量得点大量失点”でお馴染みのガンバ大阪は過去の姿なのだ。

1失点完封の罠 -なぜガンバはこんなにも自分みたいなのか-

「超攻撃」時代(2005~2008頃)のガンバはハイリスクハイリターンなサッカーだった。そのスタイルは優勝も、J2降格も経験するという結末に至り、長谷川健太氏の監督招集という形で時代は受け継がれた。ただ、残念なことに長谷川健太監督が指揮した時代は「超守備」時代(2013~2017)としてサポーターには記憶され、「勝たなければ最悪につまらないサッカー」と意味で、3冠(2014)を獲ったシーズンはありながらも、長谷川ガンバ後期の地獄のような内容の試合を観ると、こちらもハイリスクハイリターンなサッカーだったのかもしれない。

そして、宮本恒靖時代である(クルピ時代はクラブ史におけるバグとして割愛する)。「超攻撃」時代の中心選手で、西野監督がツネ様を「ポジションはセンターバックだが、攻撃的な選手だと捉えている」といった旨の発言をしたことをよく覚えている。そんな宮本氏は監督としても当然ポゼッションを重視する考えを持っている。以下、2019年ガンバ大阪オフィシャルイヤーブックに載っている同監督インタビューの一部。

「まずはボールを大事にすること。サッカーなので自分たちがボールを握れる時間ばかりではないですが、できるだけその時間を長くしながら、攻撃を仕掛ける」

「ポゼッションサッカー」という言葉を初めて意識した2005年。セオリーだと思っていたプレーを無視して、とにかく自陣敵陣を問わずボールを繋ぎ倒し、異常な数の決定機(と被カウンター)を生み出した「超攻撃」時代。私の中で“正しいサッカー”は存在しないが、“大好きなサッカー”は間違いなく当時のそれである。「こんなサッカーは人生でもう二度と見れないかもしれない」と覚悟していたので、今のガンバに絶望はしていない。期待もある。以下、同じく2019年ガンバ大阪オフィシャルイヤーブックの遠藤選手インタビュー。

「僕の中での『GAMBAISM』は『魅了して勝つ』ってこと。そういう言うと、昔からのガンバを知っている人は05~08年あたりの時代が真っ先に思い浮かぶだろうけど、あの時と今は選手もサッカーも違うから。当時の攻撃力を再現することはできない。ただ、ツネさんの中でもおそらくはああいう形に近づけながら、魅力して勝つことを理想としているはずですから」

当時を知る選手のコメントには心躍らされる。大好きなサッカーがもう一度見られるのかもしれないという期待。そうした経緯を経て、今回の清水エスパルス戦なのだ。縦へ急ぎ過ぎた開幕戦の反省を活かし、丁寧にパスをつなぐサッカーに懐かしさは感じずにはいられない。

時代は繰り返す。ただ、今のサッカーは「超攻撃」時代への原点回帰ではないと捉えている。上記の遠藤選手のコメントの通り、当時と今では選手もサッカーも違う。ただ、「超守備」時代を経験しているからこそ、このサッカーにガンバらしさを感じた。

素晴らしい内容で勝利したアウェイ清水戦

某メディアの記事で、ある有識者が「クラブのゲームモデルを作っているのはサポーター」といった趣旨の文章を書いていた。サポーターの気質、歴史……サポーターが望むガンバのサッカーとは何だろうか。これからも攻撃時代と守備時代を繰り返すのか、それとも攻撃サッカー確立の道を進むのか。スムーズにはいかないだろう。ただ、今が今後のガンバのスタイルを決める分岐点になっている気がする。

「ガンバらしさ」の模索 -宮本恒靖監督の契約解除をうけて-

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1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。2020年に筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。現在はスポーツ系出版社のライター&WEBサイト運営。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆。F1と競馬も好き