例えば、AKB48の「総選挙」。
推しのアイドルを少しでも上位に進出させるため、ファンが徒党を組んで支援活動を行う。身銭を切って、投票券が同梱されているCDを大量に買い、秋葉原の飲食店に投票を促すポスターを貼り、応援サイトを立ち上げる。ファンは推し(応援したい人物)に対して、直接的な影響を与えることができる。
ビジネスモデル的には揶揄されることも多いシステムだが、個人的には羨ましく見ていた。貢献できる役割があることは、自分の居場所があることと同義だから。希薄な人間関係が当たり前になっている時代において、こうした“繋がり”の価値は今後見直されるはずだ。孤独を感じる日常から、逆説的にAKBファンの熱狂の理由を理解できる現代人は多いのではないだろうか。
類似例は多い。「SHOWROOM」「じゃがり校」「ネスカフェアンバサダー」……サービス提供者とお客様の境界線はなくなりつつある。AKB総選挙は典型だと思うが、もはやサービス(コンテンツ)プロモーションのプロモーション主体は客側にある。情報過多で従来の宣伝活動が通じない中で、客側の“愛”や“熱量”を上手く活用できるシステムを準備できたサービスが勝つ。そんな時代が目の前まで来ている。
Jリーグサポーターの当事者意識
Jリーグはどうだろうか。
JリーグサポーターもAKBファンと同様に、貢献意欲が高いことがデータでも明らかになっている。ガンバ大阪のスタジアム来場者に対する調査によると、観戦理由として8割以上が「好きなクラブを応援したいから」を挙げ、約6割が「観戦歴10年以上」(つまり、コアファン)であることが分かっている。
また、SC相模原の代表を務める望月重良氏は自身が執筆した書籍の中で「サポーターはクラブが上から目線でおもてなしするのではなくて、共にクラブを大きくしていきたいというのが本音なんですよ」と語っている。
しかし、実態としては、多くのJクラブがサポーターをお客様として扱っている。「マグロの解体ショー」「焼きたてサンマの提供」「芸能人の〇〇ショー」……スタジアムで行われるファン向けのイベントはどれも“おもてなし”の意味合いが強いものばかりだ。AKB48総選挙を羨ましく思ったのは、こうした現状があるからであり、1人のサポーターとして貢献したいのにできないことに、もどかしさを感じている。
ただ、私も含め、具体的にどのような貢献をしたいのかを語れるサポーターは少ない。日本サッカー界では監督の指示を待つのではなく、自主的に判断しプレーできる選手の育成が課題としてよく挙げられるが、同様のことはサポーターにもあてはまるのかもしれない。
共創関係のはじまり
クラブとサポーターの共創関係が始まる兆しはある。
ガンバ大阪の遠藤保仁選手はサポーターに対して、試合中に惜しいシーンがあった際は「あ~」ではなく、選手の奮起を促す意味で低音の「ウー」という声を出さないかという提案を行っている。
他の事例としては、2018年から開始された「#ガンバ写真部」も該当するだろう。サポーターがガンバ大阪の魅力を写真を通じて発信する活動だ。インタラクティブな関係性構築はきっとコンテンツ価値を高めることにもつながるはずだ。
昨年から通っている大学院では、この共創関係を研究テーマとして修士論文を書く予定。当事者(サポーター)として、自分は何ができるのか。クラブにとってサポーターとは何か。あらゆる先行事例を調べ、自身の経験もふまえた上で考察し、結論を出し、今後の人生(キャリア)で少しでも行動に繋げられたらと思っている。
2019年12月追記
「クラブとサポーターの共創」をテーマに、ガンバ大阪広報課所属の奥永憲治氏、施設運営課の松浦悠紀氏へインタビュー取材を実施。
2021年11月追記
「スポンサーとサポーターの共創」をテーマに、横浜F・マリノスのスポンサー「マネーフォワード」社へのインタビュー取材を実施。
2022年5月追記
「トークンを活用したサポーターとの共創」をテーマに、アビスパ福岡マーケット開発部所属の平田剛久氏へインタビュー取材を実施。
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