2019年シーズン、大卒でJリーグ入りした選手は約90名。約75名の高卒選手を上回っている(「平成30年度 第67回全日本大学サッカー選手権大会総評」より)。日本サッカー界で存在感を高めつつある大学サッカー。大学に進学すればどのような成長が得られるのか。今回の記事はフットボリスタに寄稿した記事「大学サッカーという選択 Jクラブとの比較から考える育成論」をベースに、ガンバ大阪の事例も絡めながら大学サッカーを考察する。
阿部浩之選手は献身性を大学で身に付けた?
まず大学サッカーの長所として語られることの多い「人間的成長」というワードから。この抽象的とも言える言葉を考えるために話を伺ったのは、筑波大学蹴球部監督の小井土正亮氏。同氏はこの「人間的成長」を考える上で、1人のJリーガーの名前を挙げた。阿部浩之選手。ガンバ大阪コーチ時代に指導した選手の中で最も印象に残っている選手の1人だと言う。
「自分を律することができる。チーム全体を見て行動することができる」
「フォアザチームを指導する監督が多い大学サッカー界の影響もあるのかもしれない」
プロの世界では選手は個人事業主として活動しており、チームメイトも“競争相手”としての側面がある。そうした中で「メンバー外の選手が観客席で太鼓叩いて応援するのが当たり前」(小井土氏)いう大学サッカー界で身に付いたメンタリティが、プロの世界では他者との差別化に繋がっている。
阿部選手の母校である関西学院大学は「マスタリー・フォア・サービス」をスクールモットーにしている。他者、チームのための尽くすことを良しとする教えだ。スタメンでプレーできなくても、ベンチ入りできなくても、自分のやれることをやる。そうした大学の教育指針も阿部選手の振舞いに影響を与えている……かもしれない。
プロのメリット。大学のメリット
一方で、小井土監督はプレーヤーとしての成長だけであれば、Jリーグの環境に分があることも認めている。小井土監督がガンバ大阪でコーチを務めた2013年、内田選手、大森選手、西野選手ら大学生年代の選手達が出場機会を掴んだシーズンを振り返りつつ「(大学とは)刺激が圧倒的に違いますよね。同じピッチに遠藤選手がいて、何万人というお客さんのプレッシャーを感じながらプレーする。必死でやらざるをえない環境が成長を促したんだと思います」と語る。
では、プロではあるがJ3という環境下でのプレーとなる「ガンバ大阪U-23」はどうか。ガンバユース出身で、現在は筑波大でプレーする岩本翔選手は「J3と大学サッカーのレベルは変わらない」という所感を語っているという。それが事実であるという前提で考えれば、大学という環境はサッカー以外にも勉強、バイトなど、プロサッカー選手以上に様々な社会経験を積めるメリットはある。そして、それが“人間的成長”を促進する。
今回寄稿した記事は決して「高卒でプロに行くより、大学を経由した方がいい」ということを主張したい訳ではない。プロを目指している高校生年代の選手が進路を検討する参考の1つになれば嬉しい。
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