“原体験”
今回、ヨーロッパ遠征を行った目的である。「私のアナザースカイは……ドルトムントです!」と元気良くカメラの前で宣言したい。数年後、“戻って来た”ドルトムントで「懐かしいな。当時は一人旅だったんです。今、こうして妻と子供と一緒にこの地で過ごせるのは感慨深いものがありますね。だって、私はその旅で今の生き方を決意したんですから。もはや私にとって第2の生誕地と言っても過言ではないですね」……と、言い放ちたい。
ブレない生き方をしてる大人は原体験となる旅をしている。私に足りないものだ。川淵キャプテンはデュッセルドルフ近郊の「デュースブルク・スポーツ・シューレ」を観たことがJリーグ立ち上げの原動力になってるし、中田英寿に至っては旅が人生になってしまったほど。旅は人生のモチベーション。ブラジルワールドカップでもインドネシアサッカーでもACLでも得られなかった経験をヨーロッパで積みたいと思っていた。
突然の脇役 -アタランタ-
バルセロナ→マドリードと続けたヨーロッパ一人旅。最後の訪問地はドルトムント。「黄色い壁」に代表される圧倒的なサポーターの熱量。自分の大好きなサッカーが、欧州でどれだけ価値があるものとされているのか。スタジアムで体感したかった。
しかし、想定外の脇役が登場する。スタジアムに向かう地下鉄の中で聞こえきたのは我がガンバ大阪と同じメロディーのチャント。「Forza(フォルツァ)○○〜♫」……イタリア語である。ドルトムントの対戦相手であるアタランタ(セリエA)のサポーター集団が大騒ぎしていたのだ。チャントだけではなく、服装や旗までガンバサポーターに似ている。青黒の血が騒ぐ。なんたる偶然。するとガンバサポーター仲間からツイッターにメッセージが届く。
ガンバの応援はアタランタを基にしてるから、ある意味ガンバの原点ですよー!
— ウマイモンバール アッソ (@cafebarasso) 2018年2月15日
知らなかった。ドルトムントのサポーターを観に来たはずなのに、アタランタに興味が湧く。気がつくと彼らばかり目で追っていた。
愛と狂気
ドルトムントサポーターは想像を裏切らない熱量だった。2万人で埋め尽くされたゴール裏の様子は圧巻だったし、真面目に歌い続けられるチャントなど、律儀なスタイルにはドイツらしさも感じた。子供から大人まで、ルール下でエンタテイメントとしてサッカーを楽しんでいるように見えた。
一方、アタランタの応援には“狂気”を感じた。エンタテインメントに対する感情表現ではない。ゴールの瞬間、彼らの周りだけ感情爆発で時空が歪んで見えた。応援する彼らの様子は「アタランタこそ我が人生」とでも表現すべき熱量を感じた。
人生には狂う時間が必要だ。その時間が自分をまともにする。試合後、負けたにも関わらず充実した表情をしているアタランタサポーターを見て学んだことだ。なぜガンバ大阪サポーターはカオスとも言えるアタランタを応援のモデルにしたのだろう。機会があれば、今後調べてみよう。イタリアに行ってみよう。
原体験を探す旅は続く。
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