ガンバ大阪が宮本恒靖監督との契約を解除した。本件を報じるメディアの論調は概ね同じである。ポイントは2つ。
1点目は「得点力不足」。小野忠史社長も会見で言及しており、契約解除の最大の理由だとされる。長谷川健太監督退任時にも契約満了理由として近しいことがメディア・サポーター間で語られており、「ガンバ大阪らしさ=攻撃的」という考えは、このクラブで重視されている。
2点目は「コミュニケーションの問題」。こちらはメディアによって「伝える力が足りない」「求心力の限界」など表現は違うが、似た意味の言葉が並んだ。監督と選手の間に入る役割であった山口智コーチ退団の影響を指摘する声もあった。
報道で見聞きする宮本監督に関する言及はJ1残留を決め、多くの賞賛を集めた2018年と今回で実はさほど違わない。「戦術眼」「知性」……3年前はポジティブに捉えられていた宮本監督のキャラクターが、契約解除が決まった今は負の文脈で語られているようにも読めた。あらためてプロが結果でのみ評価される厳しい世界であることを痛感するばかりである。
ガンバらしさ。大阪らしさ
2018年からの宮本監督体制が、成功か失敗かの評価は人によって分かれるところ。「タイトル未獲得」「今シーズンの低迷」にフォーカスすれば失敗だが、「2018年のJ1残留」「2021ACL出場権獲得」は評価されるべき。どちらにせよ間違いないのは、今回の宮本監督契約解除から学ばなければ未来の成功はないということ。
今回考えたいのは、結果(成績)以外の評価軸としての「ガンバらしさ」について。直近の課題である後任監督を探す上でも重要なテーマだ。前述した「攻撃的」という要素はクラブ、サポーターの共通認識。ただ、それは状況によって変動せざるをえないところもあり、「攻撃的」以外に拠り所があってもいいのではないか。
今回、宮本監督の契約解除理由として語られる「コミュニケーション」に問題があったのであれば、そこの改善を最初に着手するのが自然だろう。では、どんなコミュニケーションが“ガンバらしい”のか。
サポーターの立場で宮本監督のコミュニケーションについて思い出すのは、試合前後のDAZNインタビュー。インタビュアーが質問を言い終わる前に強い口調で(苛立ちを滲ませて)回答する姿だ。プレッシャーや責任を感じていた裏返しの言動だと思うので、気の毒に思う部分もあるが、求心力が上がる姿ではなかったことも確か。
ガンバの歴史上、コミュニケーションの成功事例として思い出すのは、“ガンバらしさの祖”である西野朗監督。有名な口癖である「タフ」をはじめ、「殴られたら殴り返すのではなく、殴り続けたい」「謝る、謝らないの問題じゃない。使わない」などの名言を残し続けた。
一方で、そうした強いリーダーシップを感じる言葉とはギャップのある天然なキャラクターもサポーターから愛された。同時代にガンバでプレーした選手からも西野氏の天然ぶりは数多く証言されており、“面白い”言動は大阪の地で支持された。
振り返れば、西野朗監督以外にもサポーターから支持された指導者は實好礼忠氏(現・愛媛FC監督)や、早野宏史氏(サッカー解説者)などユーモアのセンスを持った方が多い。熱血指導で今、一番人気が高い指導者である森下仁志氏も、U-23の試合時にはピッチ上への指示で笑いを結構取っていたことを現地観戦しているサポーターなら知っているはずだ。
最近よく聞く「ゲームモデル」という言葉。ざっくり言えば、ピッチ上の指針となるもので、これを検討、決定する上ではクラブのホームタウンが持つ「地域性」も考慮されるという。大阪の地域性……もう何を言いたいかお気づきだと思うが、「笑い(ユーモア)」の要素は案外、監督のコミュニケーションスキルで重要ではないかということ。
……と、ここまで半分冗談、半分本気で書いた。監督交代を機に今回は「(監督の)コミュニケーション」をテーマに“ガンバらしさ”を考えたが、論点は多い。今年でガンバ大阪は創立30周年。宮本監督をはじめ、ガンバの歴史を紡いできた方々に敬意を示しつつ、未来にむけて必要なことを考えるには良いタイミングではないだろうか。みなさんが思う“ガンバらしさ”とは何ですか?
最後に宮本監督、約3年間お疲れ様でした。
Photos:おとがみ
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