プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE(Bリーグ)」を初めて生観戦した。試合会場は千葉県船橋市、千葉ジェッツのホームタウンである。Bリーグの中でも屈指の観客動員数を誇る人気チームと聞いていたので、アリーナの雰囲気を一度体験してみたかったのだ。
私がガンバ大阪のサポーターであることもあり、スポーツ観戦の際は選手以上に“応援する人(観客)”に注目する習慣がついている。Bリーグではそういう人達のことを「ブースター」と呼ぶらしい。私と同類であろう彼らが何に熱狂し、どのような応援をしているのかを知りたかった。
ド派手な演出に驚き
試合会場となる船橋アリーナに到着したのは、試合開始約1時間前。ここから試合終了まで息をつく暇がなかった。常に観客を楽しませる演出が用意されているのだ。
まず始まったのはオープニングショー。アリーナの照明が落とされ、派手な音楽とレーザービームが会場の雰囲気を盛り上げる。イケイケなDJやセクシーなチアリーダーが「もっと盛り上がれ」と観客を煽る。まるで六本木のクラブのような雰囲気だが、間違いなくそこは船橋だった。
音響や照明の演出だけでは事足りず、炎まで炊きはじめるではないか。消防法的には大丈夫なのか、予算オーバーではないのか……そんな私の心配をよそに、隣に座っているママ友軍団はチームカラーである赤のペンライトを楽しそうに振っていた。
スターティングメンバーを紹介するセレモニーでは、流行りのプロジェクションマッピングが駆使された。映像演出はアリーナスポーツとの親和性が高い。屋外スポーツに慣れている身としては、驚きの連続。否が応でも試合にむけて気分が高まっていく。
そして、いよいよ選手入場!勢いよく噴射されたスモークの中から出てきたのは選手……ではなくサンタクロース!? 観戦した時期がクリスマスに近かったこともあり、選手達が仮装していたのだ。圧倒的な演出の数々に驚きを隠せない。
私が知っている試合直前の雰囲気は「もっと声出せー!」「相手をいわしてまえ!」といった激しい言葉が飛び交う殺伐としたものだ。今、目の前で行われているのは本当に日本のスポーツなのか。
Jリーグを応援する人……つまり、“サポーター”は試合会場に行くことを「参戦する」と表現することがあるが、その理由として「試合観戦=応援=戦い」という意識がある。ストイックさが求められる体育会系の空気感。
しかし、Bリーグを応援する人であるブースターは違うようだ。誰しもが純粋にエンタテイメントとしてバスケを楽しんでいる様に見えた。無論、その違いに優劣はないが、新規のファンを開拓するという視点においては、Bリーグ観戦の敷居の低さに高いポテンシャルを感じたのは事実である。
演出が生み出すアリーナの一体感
試合開始後も演出は続く。攻守それぞれの局面において適当な音響が流され、アリーナ内の大型ビジョンにはブースターの声援を促す「GO!JETS!!」(攻撃時)と「DEFENSE!」(守備時)の文字が表示される。個人的にスポーツ観戦の最大の魅力は「一体感」だと考えている。Bリーグは応援の形がシンプルなので、(一部の応援席だけではなく)アリーナ全体でそれを実現できているのが素晴らしかった。
「チャント」に代表される自発的な応援文化が根付いているサポーター的には、チームが誘導する応援スタイルに違和感を覚えないこともないのだが、結果としてそのアプローチでアリーナに熱狂が生まれているのだから否定する理由がない。ホームチームへの声援は試合開始から終了までの約2時間、一度も声量が落ちることなく続けられた。
また、印象的だったのはタイムアウトやハーフタイム時に行われるイベントを、相手チームのブースターも一緒に楽しんでいたことである。チアリーダーやマスコットキャラクターも、応援しているチームの垣根を越えて交流しているのだ。
敵・味方が明確に分かれるJリーグではあまり見られない光景である。相手のファールや審判の微妙な判定にブーイングが飛ぶこともなく、試合終了後には両チームに拍手が送られる。このフレンドリーさもBリーグ(千葉ジェッツ)が人気を得ている要因の一つなのかもしれない。
ブースターの応援スタイル
サッカーのスタジアムと比較して人口密度が濃いアリーナはブースターの声援が直接的にプレーに影響をもたらしやすく、一体感を生む演出=勝たせる戦術になっているようにも感じた。ブースター自身はこの応援スタイルをどのように捉えているのだろうか。無意識の産物なのか、楽しんで応援することの効果を意識しているのか。来場者全員に配布されるマッチデープログラムやペンライトを使った応援方法も含め、Bリーグ会場は目に入るすべてが興味をひかれるものだった。
Jリーグではサポーターの応援スタイルが定期的に批判され、時代に合わせる形で進化してきた歴史があるが、Bリーグ(ブースター)の応援スタイルはこの先、どのような変化をしていくのか。定期的にアリーナを訪ねようと思う。
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